Vanishing Point in Perspective
小さなテーブルを窓ぎわに置いて写真を撮った。左はテーブルを窓と平行に置いた。右はテーブルを窓と角度をつけて斜めに置いた。左では、窓の消失点とテーブルの消失点(VP)は当然ながら一致する。右の場合では、窓の消失点(VP 1)とテーブルの消失点(VP 2)は別々の位置にできる。これも当然。
こんなあたり前のことをわざわざ示したのは、遠近法の消失点は常に一点に集まらなければならないと信じている人が多いからだ。消失点が一点に集まるのは、あくまでも上の左図のよう平行なものどうしの場合だけだ。
「リアリズム絵画入門」という本で、著者(野田弘志)はフェルメールの「牛乳を注ぐ女」の遠近法はおかしいと言っている。その理由として、右図のように、窓の消失点とテーブルの消失点が一致していないことをあげている。(著者は写実絵画の第一人者)
そして著者はこのような図を示している。フェルメールの原画ではテーブルは赤色の形をしているが、これでは消失点が窓の消失点と一致していないから、一致させるにはテーブルの形は、白線の四角のようでなければならないとしている。しかしフェルメールがそんな間違いをするはずがないからというので、あれこれ辻褄を合わせをしてひねり出したのが、このテーブルは長方形ではなく変形した「奇妙な形をしたテーブル」だとという結論だ。いついかなる場合も消失点は一つである、という大前提に立つているから、そんな不自然な解釈にならざるを得ない。
種明かしをすると実は、このテーブルは斜めに置かれていて、窓と平行ではない。その根拠の一つはテーブルの向こう側の辺が手前の辺より壁から離れていること。もう一つは女性が半身(はんみ)で描かれていること。それを平面図にすると右図のようになる、そうだとすれば、冒頭にあげた図のように、窓とテーブルの消失点が別々のところへできるのは当然だ。同書の著者はそのことに気づいていない。この平面図に基づいて、透視図の作図をすると下図のようになる。窓の消失点とテーブルの消失点(画面のはるか外にある)が同一のアイレベルの水平線上にピタリと乗っている。フェルメールの遠近法が驚異的に正確であることがわかる。
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