Affordans
知り合いが飼い猫を連れて我が家にきた時、文字どうり ”借りてきた猫” 状態だったが、スキをみて窓の外へ飛び出し、ベランダの手すりに飛び乗った。そこから下へ飛び降りようとしたが下を見てあきらめた。いくらジャンプが得意な猫でも、さすがに2階の高さからでは無理だと判断したようだ。
人間も同じで、50 cm の高さから飛び降りろと言われればできるが、3m では絶対お断りだ。この場合、過去に3m から飛び降りて足を挫いた経験があるから飛び降りないと決めたわけではない。学習によるのではなく、目で見てそれが飛び降りられる高さかどうかを判断している。
認知心理学者の J. J. ギブソンは、人間も動物も「視覚」から得られる「外部情報」にもとづいて行動していることを初めて提唱した。そして、環境が提供(アフォード)している視覚的情報の助けを借りることを「アフォーダンス」と命名した。それを理論的に解明したのが有名な「生態学的視覚論」だ。この理論は、デザインに大きな影響を及ぼした。特にコンピュータが普及して「使いやすさ」が大きな問題になっている時代に、この理論が応用されるようになった。
パソコンのユーザー・インターフェースを、テキストではなく「アイコン」という視覚情報で行うことなどがそれだ。機械語を学習しなくても見るだけで使い方がわかる。画面の中で、「押す」という行為を促すために、押す部分を3次元的な「押しボタン」の形状で表現することなどいい例だ。
そんな時代になっても「アフォーダンス」を無視しているデザインもそこらじゅうにある。この例など典型で、前のドアは手間に引き、後ろのドアは横へスライドする。それなのに、2つのドアハンドルがまったく同じ形状になっていて、間違った情報をユーザーに与えている。
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