2023年5月2日火曜日

映画「コヤニスカッツィ」

「 Koyaanisquatsi」

コッポラ監督にこんな映画があるとは知らなかった。コッポラの「地獄の黙示録」は、戦争がもたらす人間の狂気を描く黙示録映画だったが、「コヤニスカッツィ」もまた、文明によって人間性を失った社会を、叙事詩的に描く黙示録映画だ。ナレーションなどの説明はいっさい無く映像だけだが、撮影技術がすごく、強烈な説得力がある。


始まりで、人類の文明誕生以前の自然の姿を描いているが、奇岩や噴火する山など、よくこんな映像を撮れたと思うほど、壮大だが不気味で恐ろしいシーンが延々と続く。


やがて人間が登場し、文明世界が始まる。自然の脅威は技術によって征服され、発電所や高速道路が作られ、大都市が生まれる。しかしそれらの人工物も人間スケールを超えた巨大さで、人間を威圧する存在になる。


近代的な高層ビルが、画面いっぱいに埋めつくす映像が繰り返される。幾何学的で美しいが、無数の窓は昆虫の巣穴のように見え、中では AI に使われている無数の人間がうごめいている。


仕事に向かう人々が道路を埋め尽くしている。みな無表情でただ機械的に歩いている。


ラストで、打ち上げた宇宙ロケットが爆発して、破片が燃えながら落下していく映像をスローモーションで数分間も延々と写し続ける。


「バベルの塔」は人間スケールを超えた高さの塔を作って天にまで迫ろうとしたものの、その傲慢さに神が怒り、人間に天罰を与えたが、宇宙ロケットは現代の「バベルの塔」のようだ。墜落するロケットが、天罰を受けた文明の終わりを象徴している。最後に、文明が滅びた後の世界が、未来に発掘されるだろう洞窟壁画として描かれる。何かの機械の部品のような形をした人間が空中を漂っている。


エンドロールで初めて字幕が出て、題名の「コヤニスカッツィ」の意味が説明される。それはインディアンのホピ族の言葉で、このような意味だという。
        1常軌を逸した人生
        2混乱した社会
        3平衡を失った社会
        4崩壊する社会
        5他の生き方を脅かす生き方


さらに続いて、ホピ族に伝わる予言の言葉が示されて、映画は終わる。
        地の底の貴重な宝を掘り起こすとき
        大いなる災いが降りかかる
        やがて空は一面のクモの巣で覆われる
        浄化の日が訪れたのである
        死の灰を入れた鉢が傾くとき
        大地は焼けただれ海は干上がるだろう

人間が自然を破壊して文明を築き、ついには分不相応にも、核や宇宙まで手にする時、人類は滅びる、と読み取れる黙示録的予言だ。

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