「Babylon」
「バビロン」は、ハリウッドの夢を追う若者たちのドラマだが、サイレントからトーキーへと変わる映画の大転換の時代を背景にした彼らの盛衰を描いている。”ハリウッド映画史” として見ることができ、じつに面白い。
20 世紀初めに映画会社は、雨があまり降らず土地が広く、野外ロケに適したカリフォルニアに映画スタジオを作ったのがハリウッドの始まりだった。「バビロン」でその野外撮影シーンが出てくる。戦闘シーンで、自動車にカメラマンと監督が乗って、疾走する騎士に並走しながら撮影している。移動撮影用の専用機材などまだなかった時代だ。
1920 年代に入ると、トーキーが始まり撮影方法が一変する。セット撮影で、映像と音の両方を同時に記録するカメラのモーター音が大きく、防音しないことにはそれ自身のノイズを拾ってしまうので、カメラマンや監督は完全防音したブースに入って撮影する。「バビロン」でそのような撮影現場のシーンがあるが、スタッフの足音やら時計の音やらが入ってしまい何度も何度も撮り直しが続く。そのうち密閉されたブースで撮っていたカメラマンが酸素不足で気絶してしまったりする。
そういう技術的なことよりもっと大きな変化は、「見世物性」が強かった映画が、俳優が喋ることによって「物語性」が強くなっていったことだった。ただ活劇をやっているだけで人気だった大スターがトーキー化とともに ”演技” をしなければならなくなる。「バビロン」で、ブラッド・ピット演じる大スター俳優が、その時代の変化についていけず、凋落していく。映画批評家から面と向かって「あなたはもう時代遅れよ、思い上がらないで」と言われてしまう。
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