2020年7月21日火曜日

アンドリュー・ワイエスが影響を受けた人たち

The artists Wyeth was influenced 

画集「Andrew Wyeth  Memory & Magic」に、ワイエスが影響を受けた人たちについての解説がある。ワイエスが多様な人から絵を吸収していたことがわかる。以下はその要約。

ワイエスは、イラストレーターである父親の N. C. Wyeth から絵を学んだ。父親は美大出身だったので、イラストレーションでもアカデミックな画風だった。左は児童向け図書「宝島」の挿絵で、右はワイエスがわずか 1 6 歳の時の風景画だが、まだ父親の画風にそっくりだ。

ワイエスは小・中学校に行かない引きこもり(?)だったが、父親が教育をした。父は学識の高い人で、美術書はもとより、文学書や歴史書を与えて勉強させた。その中に 1 6 世紀ドイツのアルブレヒト・デューラーの画集があった。デューラーは植物などの細密描写(左)で有名だが、それにならってワイエスもたくさん植物スケッチ(右)をした。それが後に風景画の中で樹や草を細密に描くことに生かされていく。

アメリカン・リアリズムの先輩であるウィンスロー・ホーマーは海辺の絵を多く描いた。ホーマーに憧れていたワイエスは、その水彩画(左)の影響をもろに受けた。右はワイエス 2 0 歳の時の水彩画。

ジョン・マリンは日本ではあまり知られていないが、 2 0 世紀初めのアメリカのモダニズム画家で、半抽象的な風景画を描いた。その海辺の波の絵(左)のスタイルを真似て、ワイエスも半抽象的な海の絵(右)を描いた。 2 1 歳の作品だが、何でもやってみようの精神だったようだ。

ワイエスの父は冒険物や西部物のイラストを主に手がけていたので、男を描くのはうまかったが、女性の絵は苦手だったそうだ。それでかどうかワイエスは、人物画の技術を画集や美術館で吸収した。アメリカ近代絵画の父と呼ばれるトーマス・エイキンズのアカデミックな写実主義絵画(左)を勉強したのが後の人物画(右)に生かされてゆく。

ワイエスと並ぶ、アメリカン・リアリズムのもう一人の巨匠エドワード・ホッパーを、ワイエスは尊敬していた。ホッパーは、窓から街を眺める人物の絵が多いが、街が他者的である都会人の孤独感を表現した。それらの絵では、窓から入る光が壁や床に当たってできる明暗のパターンが、外と内をつなぐものの象徴として描かれている。ワイエスも窓の絵が多いが、ホッパーとの共通点が多い。

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