コロナで何かにつけてモヤモヤ感があるのは、国や専門家から明確な情報が発信されないからだ。目に見えない事実を客観的に把握し、それにもとづいた政策が必要だが、実際には、日本だけでなく世界中で失敗が続いている。目に見えないウィルスだからこそ、科学的な事実を見える化する「インフォグラフィックス」の力が必要になる。ここにあげる成功例は、すべて古く1 9 世紀のものだ。
看護婦として有名なナイチンゲールだが、実際はもっと大きい功績を残している。従軍看護婦として野戦病院に勤務していた時、あることに気付く。戦傷で死ぬよりも、それとは関係のない病気で死ぬ患者の方が多かったのだ。ナイチンゲールは大学で統計学を学んでいたので、死亡者の詳細なデータを取り始めた。それをもとに、死者を減らせる方法を突きとめる。まだ細菌やウィルスなどが知られていない時代だったが、病室の換気や、消毒の徹底、衛生状態の改善など、今では常識だが当時としては画期的な感染防止対策を実行した。それによって驚異的に死亡率を減らした。その結果を政府に報告して、病院の改善を提言した。その時の報告書に載せたのが、月ごとの死者の死亡原因を可視化した有名な図で、形から「トサカ図」と呼ばれた。この「インフォグラフィックス」による「見える化」の説得力は強力だったので、国を動かすことに成功する。数字の羅列だけだったらそんな効果はなかっただろう。
1 9 世紀のロンドンでコレラが発生し、死者が爆発的に増えた。市は医師のジョン・スノウに原因の調査を依頼する。彼は死者の住所を地図上にプロットしていった。すると、ある特定の場所に集中していて、その中心に井戸があることに気付く。住民が飲み水にしている井戸が感染源ではないかとひらめいて、井戸を閉鎖すると感染がピタリと止まった。細菌の存在など知られておらず、コレラは悪い空気のせいだと思われていた当時、飲み水から感染することを発見したのだ。「インフォグラフィックス」の威力抜群だった。
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