2020年6月7日日曜日

1 7 世紀の医療用マスク

Plague Doctor

コロナのおかげで、この絵を最近見かけるようになった。ペスト(黒死病)の流行にたびたび見舞われたヨーロッパでは、ペストの治療を専門にする医者がいたそうで、その姿を描いている。

マスクは鳥の形をしていて、くちばし部分は空気浄化用の香料が入ったフィルターになっている。目の部分にはガラスがはめられている。マスクは顔全体を覆っているから、フェースシールドにもなっている。全身を覆う防護ガウンはワックスが塗られていて通気を遮断する。手に持っている棒は、患者に触れずに治療するためのもの。ウィルスの存在など知らなかった当時でも、現在と変わらない感染防止策をとっていた。それでも医師たちは感染して、死ぬ確率が高かったらしい。

この姿に似た鳥の怪物が、ヒエロニムス・ボスの絵に出てくる。(「幻想芸術」という本の表紙になっている。)地獄で人間を襲う怪物の一匹として描かれている。医学未発達の時代、魔除けのおまじない的な意味で、このような怪物としての鳥の姿を借りていたのだろう。医者といえども「医術」より「魔術」頼りだったようだ。

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