この「ノルマンディー」は、第二次大戦での有名なノルマンディー上陸作戦のあったあのノルマンディーのことで、その地方の風景を題材にした絵を集めた展覧会だ。
なぜノルマンディーなのかは、こういうことらしい。約 200 年前のヨーロッパで外国旅行がブームになり、イタリアの名所旧跡をめぐったり、フランスの美しい田園地帯を訪ねたり、といった現在の観光旅行にそっくりのことが始まった。そのような観光地として人気のあった場所のひとつがノルマンディーで、「旧きフランスへの詩情にあふれた絵のように美しい風景の旅—ノルマンディー編」などという旅行ガイドブックもあったそうだ。
旅行の目的は「絵のように美しい風景」を探し求めることで、画家たちもそのような風景を描こうとして旅をした。今回の展覧会のサブタイトルが「絵になる風景をめぐる旅」となっているのはそういう意味だ。
「絵になる風景」とは、詩情にあふれたロマンチックな風景のことで、雲間からこぼれる光が作る明暗により、劇的な効果を高めたりするなど、情感をこめて風景を表現する絵が流行った。モチーフとして、海辺 • 河 • 田園などの眺望が好まれたが、ヨーロッパ各地にある中世の城や教会などの遺跡や廃墟は、とくにロマンを感じさせるモチーフとしてよく描かれた。今回の展覧会でも下のような廃墟の絵がいくつか観られる。
「ジェレミー修道院の眺め」(作者不詳、1830年頃)
旅の途中のふとした場所でいい景色を見つけてそれを絵にするというのは、今では当たり前にみんながやっているが、そのような態度で絵を描くようになったのは、比較的新しいことで、この展覧会は、その始まりから後の発展までを見せてくれる。
0 件のコメント:
コメントを投稿