2026年5月1日金曜日

映画「国民の創生」

 The Birth of a Nation

「国民の創生」は、今から100 年ほど前の映画だが、映画史上の歴代名作映画に必ずランキングされる。白黒サイレント映画だが、 D. W.グリフィス監督は「映画の父」と呼ばれている。

しかし同時にこの映画は黒人への人種差別を礼賛する内容で、「アメリカの恥」といわれるくらい批判されてきた。

「分断国家」といわれるアメリカだが、そのルーツをこの映画から知ることができる。そして今、トランプ大統領がそれをさらに加速させていて、それを多くのアメリカ人が支持していることの理由もこの映画から知ることができる。


映画は南北戦争から始まる。北軍と南軍が熾烈な殺し合いをして、北部と南部の憎しみの感情が高まる。戦争が終わると、リンカーン大統領は南北がひとつになることを優先しで、南部に対する融和政策をとる。しかしそれを生ぬるいとする急進派もいた。その一人にリンカーンは劇場で観劇中に暗殺される。


リンカーンの黒人優遇政策によって、黒人の社会的地位が上がり、選挙権も得る。南部の州議会では黒人政党が多数派を占めて権力を握り、黒人に有利な法律を作ったりする。街なかでは黒人が白人を襲ったりする暴力行為が日常的になり、白人は恐怖に怯えている。


ついに白人は黒人に対抗するために武装軍団を作る。これが今日まで続く「KKK」の始まりだった。三角の頭巾で顔を隠し、十字マークのついた白装束に身を固めている。。


 KKK は黒人をリンチで殺すなどして、暴力で黒人を制圧し、白人中心の社会を取り戻す。


最後に、黒人をやっつけてくれた KKK は英雄として迎えられる。映画のラストシーンで合成映像のキリストが現れる。キリストが KKK を救世主として祝福している。



KKK のおかげで社会秩序を回復し、北部と南部との対立が解消する。つまり、黒人を排除することによって、対立していた北部人と南部人が一つになり、「アメリカ人」という概念が生まれた。だから「国民」とはあくまで白人であり、黒人は「国民」に含まれていない。そういう歴史観に立っているこの映画だから、題名が「国民の創生」(The Birth of a Nation)になっている。

このラストシーンの映像は、先ごろ問題になったトランプ大統領の画像を思い出させる。キリストがトランプの肩に手を乗せている合成写真だ。外国移民の排除や、白人中心主義政策を推進するトランプが神に祝福されている。

アメリカはやがてマイノリティの人口が白人を追い越すだろうといわれる。その危機感から白人至上主義者が増えているといわれる。彼らは人種差別を正当化する。その代表が今でも続いている KKK で、トランプ政権を強力に支持している。彼らは今でも映画と同じように白頭巾をかぶり、南北戦争時代の南軍の旗を掲げている。まさに「分断国家」アメリカだ。


こちらで「国民の創生」全編が見れる。→https://www.youtube.com/watch?v=2Qcf7AvTuvM

2026年4月30日木曜日

佐島のイタリアン

 AzzurrA Mare Sajima

久しぶりに湘南へドライブして、葉山の少し先の佐島にある海辺のイタリアン・レストランで食事をした。相模湾に面していて、オーシャンビューが素晴らしい。海の向こうに伊豆半島がかすかに見えて、さらにその先の富士山が見える。


このレストランから隣の建物がよく見えるが、これは「ブリキのおもちゃ博物館」で有名な北原照久氏の別荘。


2026年4月29日水曜日

「横浜絵付け」の陶磁器

Yokohama - Ceramics

横浜駅近くに「真葛焼ミュージアム」という小さな博物館がある。 明治時代の陶工、宮川香山の作品を展示している。当時の日本の陶磁器は海外で人気があり、横浜では海外輸出用の陶磁器が盛んに作られ「横浜絵付」と呼ばれた。宮川香山はその代表的作家だった。

日経新聞の「はじまりの横浜 10 選」で、前々回の「横浜絵」と、前回の「横浜写真」に続いて今回はこの「横浜絵付」が取り上げられていた。

香山のこの作品は、華やかな牡丹の花が浮き上がるように表現されていて、蓋部分にはリアルな猫がいる。香山の造形はこのように 3D 的な表現が独特だった。日本の陶磁器とは違った感覚で、香山は外国市場での受けを狙っていたという、

香山の窯は「真葛焼」といわれ、大人気を博して、明治時代の外貨獲得に大きな貢献をしたという。

2026年4月28日火曜日

「横浜写真」の始まり

 Yokohama-Photo

開港間もない横浜で始まった写真の記念碑が馬車道にある。上に箱型のカメラが乗っていて土台には「日本写真の開祖  写真師・下村蓮杖  顕彰碑」とある。下村蓮杖は、居留外国人や外国人観光客を相手に日本初の写真館を開いた写真師だった。その写真は「横浜写真」と呼ばれた。

日経新聞のコラムの「はじまりの横浜 10選」シリーズで「◯◯発祥の地」が多い横浜のさまざまな文化の「始まり」を取り上げている。そのなかで、玉村康三郎という、もう一人の「横浜写真」の写真師を紹介している。

玉村康三郎も下村蓮杖と同じ頃に横浜に写真館を開業したそうだ。彼も肖像や風景を撮って、外国人向けの日本土産用の「横浜写真」で商売をした。その中の一枚が記事に紹介されている。「鼓を打つ芸奴」という白黒写真に彩色をしたもので、なかなか美しい。



2026年4月27日月曜日

歌川貞秀の「横浜絵」

 「Yokohama - E」

日経新聞の「はじまりの横浜」シリーズは、横浜で発祥したさまざまな文化を紹介している。そのなかで、歌川貞秀の浮世絵が取り上げられていた。浮世絵はあまり詳しくないが、同記事によれば、歌川貞秀は、広重や北齋が亡くなったあとの幕末に売れっ子の絵師になったそうだ。その貞秀は何度も横浜に足を運び、開港したばかりの港を取材したという。そして異人たちの暮らしや装いを色鮮やかに描いた。これらは「横浜絵」という錦絵の新ジャンルになり、人気を博したという。


これは、「横浜異人商館乃図」という絵で、左上に星条旗が見えるからアメリカ商館なのだろう。西洋絵画的な遠近法も取り入れている。

歌川貞秀の他の「横浜絵」も調べてみたが、たくさんある。その中で「横浜鉄橋乃図」に興味を引かれる。この橋は関内の「吉田橋」で、日本人と外国人が入り乱れて橋を渡っている。この橋の左側は外国人の居留地区で「関外」と呼ばれた。橋の右側は今でも同じ名前の「関内」だ。「吉田橋」はその両側を結ぶ橋だった。橋の右側が現在の「伊勢佐木町」で、左側が「馬車道」だ。下の川は現在は高速道路になっている。橋は復元されたものだが、斜めの格子状のデザインはそのまま維持されている。


現在の吉田橋

2026年4月26日日曜日

アンソロピックの AI

 Cloude

数日前のニュースで、アンソロピック社が現在の AI アプリ「クロード」をバージョンアップした「クロード・ミュトス」を発表したと伝えていた。これはサイバー攻撃を防御するためのAI で、ネットワークに潜んでいる有害なアプリを見つけ出して、無力化するものだという。

現状の生成 AI の市場シェアを調べてみたら以下のようだった。
 第1位:「オープンAI」の「チャットGPT」
 第2位;「Google」の「ジェミニ」  
 第3位:「Microsoft」 の「Copilot」 
 第4位:「アンソロピック」の「クロード」  

4位のアンソロピックは最近よく話題になる。同社の「クロード」は、企業や組織の用途に特化した高性能 AI で、アメリカ政府が軍事用途に使っている。今度のイランへのミサイル攻撃でも、人工衛星や監視カメラなどから収集した情報をもとに、 AI が判断した攻撃目標にもとづいて、軍は攻撃した。ところがその標的になったのは小学校で、百数十人の子供が犠牲になった。  それで 同社の AI の非人道性が問題になった。

アンソロピック社は最近、日本に進出して東京オフィスを開設し、データセンターも作ると発表した。そして CEO が来日して高市総理と面会した。このことは、アメリカと同様に日本政府が同社と何らかの関係を持つことを意味するのだろうか?


2026年4月25日土曜日

「フィルム・ノワール」の映像手法

Film Noir 

前回書いたように、「フィルム・ノワール」は、1940 ~ 1950 年代に多く作られた殺人事件がからむ犯罪サスペンス映画だが、戦前のドイツ表現主義映画の影響を受けていた。人間の不安や恐れを表現するために、白黒映画の特徴を活かした独特の映像手法が発達した。


「深夜の告白」(1944 )は、ビリー・ワイルダー監督によるフィルム・ノワールの名作だが、この映画を事例にして。フィルム・ノワールの全般に共通する映像の特徴をまとめてみた。

この映画は、保険会社の外交員が、美貌の人妻と共謀して、夫を殺して保険金を詐取しようと企む、というストーリー。事故死と見せかける完全犯罪のつもりだったが、保険会社は疑念を抱き調査を始める・・・


特徴1:光と影の強いコントラスト
フィルム・ノワールの意味が「黒い映画」であるとおり、夜のシーンが多いが、昼でも窓が閉まった暗い室内の場面が多い。だから光と影の明暗コントラスが強い映像になる。女が男にピストルを向けているこのシーンでも強いコントラストが緊張感を高めている。

特徴2:人間の影
女がソファに横たわっていると、突然男の影が壁に映り、知らない誰かが来たことに気づく。サスペンス性を高めるためのフィルム・ノワールの常套手段だ。


特徴3:人間の内面を映す鏡
外交員と人妻が会っているシーンで、2人は鏡を見ながら話している。表面的には差し障りのないことを喋っているが、実はそれぞれが企みを持っていて、そのことをお互いにわかっている。鏡は人間の内面を映すものとして使われている。

特徴4:眼のクローズアップ
フィルム・ノワールの登場人物は、真実を語っているのか、人を欺くことを話しているのかわからない場合が多い。だからそれを判断させるために、カメラは目をクローズアップで撮る。”目は口ほどにものを言い”だ。

特徴5:宿命の女
魅力で男を惑わせ破滅に導く女をファム・ファタール(宿命の女)というが、フィルム・ノワールでは必ずそういう女が登場する。外交員が家を訪れると、2階からバスタオルを身にまとっただけの女が現れる。外交員は魅了されてしまい、やがて二人は共謀して女の夫殺しへ突き進んでいく。そして最後に男は破滅する。女は典型的なファム・ファタールだ。

特徴6:事件の真相を追う人間
フィルム・ノワールで必ず登場するのが、事件の真相を解明しようとする刑事や私立探偵だ。彼らはたいていどこか影のある暗い人間の場合が多い。この映画の場合は、保険金の不正請求がないかを調べる保険調査員がその役をつとめている。事件は事故ではなく、殺人ではないかと疑い、しつこく調査する。クセの強いそのキャラクターが映画を面白くしている。