2026年4月6日月曜日

クノップフの「洪水」の絵

Khnopff

ベルギーの画家クノップフの代表作「見捨てられた町」は有名だ。以前あった「ベルギー奇想の絵画展」にも出ていた。かつて商都として栄えたブルージュの街が洪水で死都になった状態を描いている。建物が残っているが無人の街の空虚さを描いている。


もうひとつ クノップフの同じ洪水の絵で「ブルージュにて、聖ヨハネ施療院」も洪水で水に浸かった病院を描いている。廃墟になった建物の無人の静けさを強調している。


20 世紀初めに活躍したクノップフは、繁栄していた町が自然災害で凋落した様を描いたが、それは 20 世紀的世界観に立っていた。東日本大震災の津波で街が壊滅した現代にもつながる世界観だ。比較のために印象派のシスレーの「ポールマルリーの洪水」を見ると、19 世紀的世界観との違いがわかる。建物が水に浸かっているが、明るく美しい光景として描いていて、まったく悲観的ではない。



2026年4月5日日曜日

クレリチ絵画の ”無人の世界”

Fabrizio Clerici 

印象派のように19 世紀の絵画は、美しく平和なものとして世界を描いた。しかし20 世紀になると、戦争やパンデミックや気候変動などが人間の文明を脅かすようになり、楽観的に世界を描くことができなくなった。20 世紀の現代画家はそういう世界観に立って描いたが、その一人がイタリアのファブリツィオ・クレリチだった。クレリチは文明が滅びて人間がいなくなり、過去の遺跡だけが残った無人の世界を描いた。

「水のないヴェネツィア」(1951) ヴェニスは、ラグーン(干潟)に無数の杭を打って、その上に島を作り、それらを橋でつないで作った町として有名だが、気候変動で海水の水位が下がり、杭がむき出しになった街を描いている。手前には沈んだ船の残骸が見える。


「太陽の舟」(1976)  巨大な木造船が骨だけが残って朽ちている。ノアの方舟ではわずかの人間だけが救われ、新しい世界を作ったが、この方舟は人間を救うことなく、無人になった世界とその文明の残骸だけが残っている。


「ローマの眠り」(1955) 滅びた古代ローマの廃墟の風景。栄華の歴史を物語る残骸が散らばっている。横たわっている彫像があるが、今では永遠の眠りについている無人の光景。


2026年4月4日土曜日

映画「猿の惑星」

「Planet of the Apes」

映画「猿の惑星」のラストシーンは衝撃的だった。「自由の女神」像が海岸の砂に胸まで埋もれている。それを見た宇宙飛行士の主人公は、ここが地球だったことに初めて気がついた。


宇宙飛行士が不時着した惑星は猿が支配するする星だった。彼は捕えられるが、猿たちは人間以上に知的な生物だった。最後に解放されるが、ある猿が言う「彼はあそこで何を見つけるのでしょう」すると別の猿が「自分の運命さ」と答える。そして宇宙飛行士が見たのがこの風景だった。彼は知らないうちに地球に戻っていたのだが、それは核戦争で全滅した地球だったのだ。彼は一人だけ生き残た最後の人間だった。猿の言ったとうり彼は「自分の運命」を知った。そして馬から下りて砂浜にひざまずき叫ぶ「ああなんて事だ、馬鹿どもめが」・・・

人類の文明が終わりになるのではないかと思うくらいの愚行を繰り返している現代に対する警句の映画だった。


2026年4月3日金曜日

トランプ大統領と映画

Trump & Hollywood


「大統領とハリウッド」という本は、歴代アメリカ大統領とハリウッドとの関係という視点からアメリカ政治の歴史を解いている。戦後の東西冷戦時代のマッカーシズムで標的になったハリウッドで多くの映画人が犠牲になった。9.11 事件の時には、アメリカの中東攻撃のプロパガンダ役を映画が果たした。そしてトランプが大統領になると、リベラル派が多いハリウッドは批判的になった。そのように同書は、大統領とハリウッドの、つかず離れずの関係を解いている。

同書の表紙の写真は、トランプ大統領とマリリン・モンローのそっくりさんとの2ショットで、トランプと映画メディアとの繋がりの強さを示している。


トランプ大統領はもともとは政治経験は皆無で、むしろメディアで名を挙げた人だ。素人がビジネス課題に挑戦するテレビのリアリティ番組で、トランプは会社の社長役で司会を務めた。「お前はクビだ!」(You are Fired)の決めゼリフで人気を博したが、大統領になった時もその通り閣僚を次々にクビにした。





そしてトランプは 20 本以上の映画にカメオ出演している。例えばヒット作「ホーム・アローン2」(1992 年)では本人役で登場している。当時彼が所有していたニューヨークのプラザ・ホテルが舞台で、トランプの経済的成功を示している。


また「ゴスート・ラブ」(1989 年)というB 級ラブコメディ映画では、栄えある「最低助演男優賞」を獲得している。

2026年4月2日木曜日

ポピュリズムの失敗

Populism

2022 年に、イギリスのトラス首相は「大型減税」を掲げて政権の座についたが、国民の猛反対を受けて、わずか1ヶ月半で辞任した。


日本でも、世論調査で「消費税ゼロ」に「反対」が 66 % もあった。



2026年4月1日水曜日

映画「エジソンズ・ゲーム」 エジソン対テスラの「電流戦争」

「The Current War」

電気自動車で世界を席巻しているテスラ(直近では業績が悪化しているようだが)は、天才発明家テスラに由来する。電気が発明されたばかりの19 世紀末に、送電方式の標準化をめぐって覇権争いが繰り広げられた。「直流方式」を主張するエジソンと「交流方式」を推進するテスラとの「電流戦争」だった。


この バトルを描いた映画「エジソンズ・ゲーム」(2020 年) が面白かった。陰謀やら裏工作など汚い手を使うバトルが繰り広げられる。最終的に勝ったのはテスラで、交流方式による「電気の時代」の幕開けになり、現代につながっている。

2026年3月31日火曜日

妹島和世の建築

 Kazuyo Sejima、 Architect

妹島和世が、日本芸術院賞を受賞したという報道(3 / 27)があった。すでに国内外からノーベル賞級の賞を受賞しているから、今さらという感じがするが。

妹島和世の建築は好きなので、あちこち見てきたが、いちばん身近にあるのが、横浜市の「大倉山の集合住宅」で、見学に行ったことがある。4住戸だけのこじんまりとした集合住宅で、曲線を多用した造形がユニークだ。各住戸には小さな中庭があり、それらが細い路地でつながっている。プライベート空間とパブリック空間が融合していて、集合住宅の新しいコンセプトを提案している。また外部の人間も道路から入って通り抜けることもできるが、住戸のプライバシーが守られているうまい設計になっている。