2026年8月29日土曜日

「敗北を抱きしめて」(続きの続き)

 Embracing Defeat

第二次世界大戦後の日本人を描いた「敗北を抱きしめて」は、下巻の最後のページでこんな漫画を取り上げている。アメリカの占領が終わりに近づいた頃の加藤悦郎の漫画だ。

「占領」という檻から日本人が釈放され、「安保条約」と書かれた別の檻に入れられようとしている。その檻の鍵はアメリカ軍兵士が握っている。

この頃になると東西冷戦が激しくなり、朝鮮戦争も起きた。アメリカは、日本に再軍備を命令して、警察予備隊(自衛隊の前身)が生まれた。そして日本全土にアメリカ軍基地を張り巡らせた。「日本の非軍事化と民主主義化」という占領初期のアメリカの政策は逆転してしまった。この漫画はそんな日本の哀しい状況を描いている。

右は同じ加藤悦郎が戦後すぐに描いた漫画で、アメリカの占領軍が日本を軍国主義から救った解放軍として描いていた。このような「平和」と「民主主義」の理想を追求していた日本人の夢は同じアメリカによって打ち砕かれた。

その問題は 80年たった今も、憲法改正問題などのように未解決のまま続いている。同書の最後で著者はこう言っている。『日本の敗北とアメリカの占領は多くの遺産を残したが、同時に大きな問題を残した。しかしその問題はまだ何ひとつ決着をみていない。日本がどこに着陸するのか誰にもわからない。』


2026年8月28日金曜日

ドキュメンタリー「WHAT THE HEALTH」

What the Health 

ネットには高齢者むけの健康情報が溢れている。NETFLIX の「WHAT THE HEALTH」というドキュメンタリーを見ると、そんな情報を安易に鵜呑みにしてはいけないことがわかる。

医者は、健康にいい食事は、米などの炭水化物と、肉などのタンパク質と、野菜などのビタミンをバランスよく摂れと必ず言う。しかしこの番組は、肉や乳製品や卵などの動物性食品は、糖尿病やガンや心臓病などの原因になると警告している。

そもそもタンパク質は植物に最も多く含まれている。だから馬や牛などの草食動物はみな体が大きく強い。肉食動物はその草食動物を食べることで間接的にタンパク質を補っている。植物性食品は必要なすべての栄養素を含んだ完璧な食べ物だという。人間も動物性の食べ物をいっさい摂らず、植物性の食べ物だけを食べるのが最も健康にいいという。

しかし食品業界は、動物性食品の害について何も言わない。番組はそのことを食品業界にただそうとするが取材を拒絶される。そして糖尿病協会やガン協会や心臓病協会などの健康を守るべき医学団体にも取材を申し込むがやはり拒否される。医学団体は食品業界から多額の資金援助を受けているからだ。


2026年8月26日水曜日

「敗北を抱きしめて」(続き)

 Embracing Defeat

一昨日、ジョン・ダワーの「敗北を抱きしめて」について書いた。→
https://www.blogger.com/blog/post/edit/5842824525266145803/5499197433097563952


もう少し追加をすると、この本の序文で著者は、こんなことを書いている。

「この本の目的は、世界で最も苦しい敗北をした日本の人々が、敗戦後に直面した苦難を伝えることでことであり、同時に敗戦にたいして日本人がみせた多様で、エネルギッシュで、矛盾に満ちた、素晴らしい反応を描くことである。」

「日本人にとって敗戦は、自己変革のまたとないチャンスでもあった。「よい社会」とは何なのか。この途方もない大問題が敗戦の直後から問われ始め、この国のすみずみで、男が、女が、子供までもが、この問題を真剣に考えた。そしてなんと多くの日本人が「平和」と「民主主義」の理想を真剣に考えていたことか!」 

「それは、戦勝国アメリカが改革を強要したからではなく、それをチャンスと捉えて多くの日本人が変革の筋立てを自ら前進させた。そういう国民の声を背景に、政治家や官僚は、改革を実行していき、「農地改革」「選挙制度化改革」「憲法改正」「労働法改革」「教育改革」など今日まで続く国の根幹を作っていった。」

このような状況を表している資料として同書は、当時の加藤悦郎の漫画をあげている。巨大なアメリカのハサミが日本の国民を抑圧してきた鎖を断ち切り、国民は解放の喜びにひたっている。その背後で、保守的な政治家と軍人が逃げ出している。これは終戦のわずか2ヶ月後の漫画だ。


それから80年たった今、世界の環境は激変し、日本の「国の在り方」が問われ始めているが、この本はその議論をするうえでの示唆に富んでいる。 


2026年8月25日火曜日

2026年8月24日月曜日

「敗北を抱きしめて」

 Embracing Defeat

「敗北を抱きしめて」は、歴史家ジョン・ダワーによる、敗戦直後の日本の歴史を論じた名著で、アメリカと日本の両方で大ベストセラーになり、ピュリツッア賞など多くの受賞をした。公的資料にもとづく普通の歴史書と違い、当時の日本人の苦難の生活を、雑誌、写真、漫画、流行語などの資料を使ってリアルに描き出している。本の帯に、同書における著者の歴史観が簡潔に書かれているので、以下にそのまま引用する。

『1945 年 8月、焦土と化した日本に上陸した占領軍兵士が、そこに見出したのは驚くべきことに、敗者の卑屈や憎悪ではなく、平和な世界と改革への希望に満ちた民衆の姿であった。勝者による上からの革命に、敗北を抱きしめながら民衆が力強く呼応したこの奇跡的な「敗北の物語」を、米国最高の歴史家が描く。』


同書に使われいる写真の資料は当時を経験した年代の人間には懐かしい。街中で進駐軍(当時はそう呼んでいた)のジープが走り回っていた。米軍兵士たちはガムやチョコレートを子供たちに配っていた。

校舎不足とベビーブームから青空教室が普通だった。クラスを2つに分けて、午前と午後に二度授業をする二部授業も経験した。



2026年8月23日日曜日

認知戦「現代の戦場はスマホと脳だ」

 Cognitive Warfare

SNS で毎日のように偽情報や偽画像があふれている。ほとんどが素人が作ったものだと一目でわかる。しかし外国の諜報機関による世論工作のための SNS 情報は一見して見分けがつきにくい。

最近出た「認知戦  悪意の SNS 戦略」という本は、SNS によって人の心理に影響を及ぼそうとする認知戦の実態を明らかにしている。著者はイスラエル軍で認知戦の実務経験のある専門家だ。

現代の戦争は軍事力よりも、SNS の情報発信によって敵対国民の意識に働きかけて、国を内部から分断させる「認知戦」が重視されている。この本の帯に「戦場はスマホと脳だ」とあるように、スマホとSNS を使って情報工作が行われる。

いま強力に認知戦を仕掛けているのは、世界の覇権を狙っている中国で「中国は素晴らしい国だ」と思わせる情報を世界中に発信し、何十万ものフェイクユーザーを使ってその情報を拡散させている。特に日本は最大のターゲットで、「日本は悪い国だ」というイメージを植え付ける情報を垂れ流している。情報をスマホに頼っている人、特にAI を神の声のようにありがたがる人は、その情報を間に受けて拡散に協力してくれやすい。そういう人間を中国では「役に立つ馬鹿」と呼んでいる。