Westward the Course of Empire Takes its Way
前回、アメリカの西部開拓を描いた絵画「アメリカの進歩」について書いたが、その続きとして、もうひとつの絵画「西へ、帝国は進む」について。これはエマニュエル・ロイツェという画家が1861年に描いた。
19 世紀アメリカは西へ西へと西部開拓をして、アメリカ全土を領土にする、そして太平洋岸へ到達する。この絵は、その瞬間のアメリカ人の歓喜を描いている。人々が眺めているのは太平洋のかなたで、そこは黄金色に光輝いている。
Westward the Course of Empire Takes its Way
前回、アメリカの西部開拓を描いた絵画「アメリカの進歩」について書いたが、その続きとして、もうひとつの絵画「西へ、帝国は進む」について。これはエマニュエル・ロイツェという画家が1861年に描いた。
Columbia leading western expansion
先日 BS で「建国 250 周年の米国 トランプ大統領がもたらした功と罪」という番組をやっていた。連日報道されるトランプ大統領の言動を見るにつけ、自由と民主主義の国アメリカがこれからどうなってしまうのかというテーマを深掘りしていた。
そのときコメンテーターの一人がこの絵を紹介していた。西部開拓時代の1872年にジョン・ガストという画家が描いた絵で、「アメリカの進歩」という題名だそうだ。
面白いのは、女神のような女性が、右手に教科書を持っていて、左手には建設中の電信線の先端を持っていること。文明を象徴する教科書と電信によって、野蛮人が住む未開の地に文明を広げることが、「アメリカの進歩」だとアメリカ人は考えていた。
だから現在ではこの絵は、先住民族や黒人の差別を賛美しているとして、否定的に捉えられるようになっている。ところがトランプ政権になると、この絵が政府の公式 HP に掲載されるようになったそうだ。外国移民の排除を強力に進めるトランプ大統領の政策を正当化するためだという。しかもそれを多くのアメリカ人が支持しているそうだ。絵に描かれた光と闇の分断が、今また再現されつつあることを同番組は指摘していた。
The architecture of National Parliament Building
江戸東京博物館で開催中の、特別展「洋館 明治の夢と挑戦」が面白そうだ。江戸から明治に転換して、東京の中心地に、近代国家としての威信を懸けた建築が建てられていった。国会議事堂、裁判所、国立銀行、駅舎などの建造物が次々に建てられていく。それらはヨーロッパの伝統的建築様式のスタイルを模していた。
これは同展に展示されている国会議事堂の建築パースで、ドイツの建築家 エンデ & ベックマン の設計だという。壮麗なドイツ・バロック様式の建築だ。当時の外務大臣の井上馨が進めていた、東京をパリ並みの近代都市にしようとする都市計画「官庁集中計画」の一環としてデザインされた。しかし井上馨が辞任してしまって、実現せずに終わった。
OSAKA EXPO
大阪万博の EV バスのトラブルの件で、いまだにゴタゴタが続いているようだ。日本のベンチャー企業が設計して中国メーカーに生産委託したバスだが、ブレーキの不具合など重大なトラブルが多発して使えなくなり、190台がいまだに EVバス墓場に野ざらしのまま放置されているという。
閉幕後は一般路線バスに転用する予定だったがそんな危険なバスを引き取る会社はない。バスを発注した大阪メトロは損害賠償を請求し、国も助成金の返還を求めている。バスを作った企業は経営破綻した。今どき EVバスは日本中で普通に走っていて、特別な技術ではないのに、なぜか大阪万博は失敗した。
思い出してみると、大阪万博では他にもたくさんの問題が起きた。
未来の技術や社会の姿を先取りして見せるのが万博の役目だが。「未来」どころか「現在」にも追いついていない万博だった。
Painter and Film Director
映画は絵画と同じ視覚芸術だから、テーマや表現手法などで共通点が多く、そしてお互いに影響しあう。だから多くの名監督は、もともと画家だったり、美術大学で絵学んだ経験があったり、美術史の深い知識を持っていたりするケースが多い。彼らは、セリフやナレーションなどの言語に頼らずに、ビジュアル(視覚)の力でストーリーを語る。
黒澤明 絵コンテを自分で描いていた。若い頃画家を目指して、公募展にも入選したくらい本格的だ。絵コンテの個展をパリでやったりした。これは「影武者」の絵コンテで、セット、衣装、カメラの構図などを決めている。
ピーター・グリーナウェー ロンドンの美術大学で学んだ後、映画を始めた後も絵画の個展をやっていた。絵画や建築をテーマにした映画が多いが、「英国式庭園殺人事件」はズバリ主人公が画家で、絵の制作過程が出てくる。三脚に乗せた絵のフレーム決めの道具を使っているのが面白い。
当時の朝日新聞(映画では『東京日報」に変えてある)が、過激な主戦論で国民世論を煽って、開戦に導いた事実は、今ではよく知られているが、映画は同新聞の内幕を描いている。
開戦反対論の山本五十六はだんだん少数派になっていくが、その時のシーンで、朝日新聞の記者が取材に来る。すると記者は威丈高に「あなたは弱腰だ」と言って山本に迫る。それに対して山本は、戦争がいかに無意味かを冷静に説明する。そして客観的事実に目を背け、威勢のいいことばかりを言う記者に、「眼で見ろ。耳で聴け。心で想え。」と報道機関の責務を諭す。やがて戦争が始まると山本は、不本意ながら太平洋艦隊司令長官として真珠湾攻撃の指揮をとるが、やがてミッドウェー海戦で大敗北をする。しかし朝日新聞はその事実を隠して大戦果を挙げたかのように報道して、国民の戦意高揚を煽る。朝日新聞の編集室のシーンがたびたび出てくるが、編集長が記者たちにもっと過激な記事を書けと檄を飛ばしている。
そして終戦となる。すると次の日の編集室にはもう新しい編集方針の張り紙が貼ってある。「軍備より平和を!」「アメリカの民主主義から学べ!」 これが有名な朝日新聞の「手のひら返し」だ。ラストシーンで記者が、焼け野原になった東京を眺めながら、山本五十六の言った言葉『眼で見ろ。耳で聴け。心で想え。』をかみしめている。「The Trouble with Harry」
昨日たまたま TV をつけたら BS で、ヒッチコック監督の古い映画「ハリーの災難」をやっていた。コメディタッチの映画だが、ヒッチコックらしい洒落っ気がある。若い頃ロンドンの美術大学で絵画を学んだヒッチコックは、どの映画にも必ず絵画が登場し、大事な役割りをする。この映画も抽象画を描く売れない画家の主人公が登場する。彼は村にある小さな雑貨店の店先で、絵を売っているが、まったく売れない。この映画は1955年の制作だが、登場する画家の抽象画は、ジョン・フェレンという画家が描いている。当時アメリカで流行していたポロックなどと同じ抽象表現主義の画家だった。(右はジョン・フェレンの作品)雑貨店の女主人が絵を褒めると、主人公が「それは上下逆だよ」という抽象画でお馴染みのギャグが入ったりする。
画家が林の中で風景をスケッチしていると、草むらの中に死体が転がっているのを見つけて、サスペンス映画の展開になる・・・
すると画家は風景を描くのをやめて、死人の顔をスケッチする。その絵は被害者にそっくりだったので、警官は画家が殺人犯ではないかと疑う。
すると画家は、「その絵は意識下に眠る忘れかけた記憶にもとに描いたもので、モデルがいるわけでない」と得意の芸術論を言って警官を煙に巻く。そしてその場でスケッチに手を加えて、閉じた目を、両目が開いた表情へと書き替えて見せる。つまり死者を正者へ生き返らせてしまったのだ・・・