Phycogeography
日経新聞のコラム「不条理な現実を裂く」シリーズで、ギー・ドゥボールの地図を紹介していた。地図とは一般的に、地形や道路などの情報を客観的に視覚化した記録だが、この地図はまったく違う。
既存のパリの市街図を複数の断片に切り分け、それらを赤い矢印で結び替えている。人が都市をさまよう中で感じる情動の強度に従って位置関係や距離を決めている。人間はある街区に引き寄せられたり、避けたりする。そういった歩行者の経験によって書き換えられた地図だ。
ギー・ドゥボールは、資本主義的な効率や管理に支配された都市空間を批判した思想家だが、その観点からこの地図を提唱した。都市を歩くときに迷ったり、偶然に何かを見つけたりする偶然性が奪われている現在の都市空間への批判だ。これを「心理地理学」と呼んでいた。
これは日本でもよくある。居酒屋などが並ぶ、親密感のある路地裏が、都市再開発で消えて、近代的なビルに変わったりする。
そして記事の筆者は、そういう都市を効率的に移動するための地図として使われているナビゲーションが、街を歩くことの偶然性を奪っていると指摘している。