「Sacrifice」
何年ぶりかで、タルコフスキー監督の名画「サクリファイス」を観た。冒頭のシーンで、湖のほとりで男が、枯れて倒れた木を起こして植え直している。そばの小さい息子に毎日水をやれば木は生き返るよ、と言う。そしてラストで、息子が水をやって、木を見上げているシーンで終わる。この象徴的な二つのシーンで、タルコフスキーの世界観を表現している。二つに挟まれたストーリーは、黙示録にある、人類の「終末」と「再生」の物語だ。
タルコフスキーは「西洋の文明は物質的進歩によって絶滅する」という信念があり、映画の最後で主人公に同じセリフを言わせる。この映画が作られたのはチェルノブイリの原発事故の頃で、黙示録的恐怖が現実のものになった時代だった。