2016年11月13日日曜日

トーマス・コール「帝国の推移」

Thomas Cole : "The Course of Empire"

大統領選はトランプさんが勝ったが、選挙スローガンは、"Make America Great Again" (アメリカをもう一度偉大に)だった。アメリカ帝国の夢をもう一度だ。

19 世紀のアメリカの画家トーマス・コールは「帝国の推移」という連作で、風景に託してアメリカの過去・現在・未来を描いた。とがった山が遠くに見える同じ場所の風景が時代と共に変化していくようすを描いている。上から「未開の状態」「牧歌的な状態」「帝国の完成」「帝国の衰退」「荒廃」という5つの段階だ。コールは、経済的豊かさを追い求め、領土拡張を進めているアメリカの将来を悲観していた。トランプさんは回生の6段階目を作れるか?



2016年11月10日木曜日

「昇龍橋」横浜にある石造アーチ橋

The old arch bridge in Yokohama

この「昇龍橋」という4mくらいの小さい石橋は明治時代に作られたもので、横浜市の歴史的建造物に指定されている。ここだけ切り取ると田舎の風景に見えるが、普通の住宅地がすぐ隣にある不思議な場所だ。

石造アーチの橋はもともとは日本にはなく、江戸時代に朝鮮半島あたりから入ってきた技術なので、九州に集中していて東日本にはほとんど無い。万世橋など東京にある石橋は明治時代に九州から石工を呼んで作らせたものだという。

それが横浜のこんなところに一つだけ唐突にある理由はよく分かっていないそうだ。


2016年11月7日月曜日

「外交官の家」アール・ヌーボーの洋館



Art Nouveau in Yokohama : "Diplomat Residence"

アール・デコの建築は昭和なのでかなり残っているが、アール・ヌーボーは明治なので、あまり現存してない。地元横浜では山手の洋館「外交官の家」くらいのようだ。ただしパリにあるような本格的ヌーボー建築ではなく、外観はごく普通の洋館。だが内部の家具・暖炉・照明器具などにアール・ヌーボーをたくさん見ることができる。

鋳造製のドアの取っ手が素晴らしい。植物がモチーフの典型的なアール・ヌーボーのデザインで、こんな狭い中にもびっしりと模様を施している。試しに触ってみたが握りごこちがとてもいい。

部屋ごとに違うデザインのステンドグラスもいい。植物と自由曲線による優しい模様で、アール・デコの幾何模様との違いがよくわかる。


2016年11月3日木曜日

ロードスター

Roadster
かつての MGB を現代的に再現したこの車が好きで、2代目と3代目にわたって長い間愛用してきた。空気を感じながら田舎道をのんびり走るのが楽しい。最近モデルチェンジした4代目はさらに魅力的だが、もう卒業ということに。


2016年10月31日月曜日

プジョー 307

Peugeot 307
3年ほど前まで乗っていた。普通のファミリーカーだが、近ごろはやりのガンダムチックな車とちがって素直で柔らかい感じが気に入っていた。このメイドインフランスはへたってしまい、今はこれによく似たメイドイン広島を使っている。



2016年10月28日金曜日

エリック・デマジエールの空想建築

"Erik Demazieres, Imaginary Places"

エリック・デマジエールの作品集をやっと手に入れた。空想の建築を幻想的に描いているフランスの版画家で、3年前に町田市立版画美術館で初めて見て以来好きになった。

この洞窟のような壁面がびっしりと本で埋めつくされた空想の図書館はボルヘスの小説「バベルの図書館」の幻想イメージを視覚化したもの。

上端では天井を真上に見上げているが下端では下の階を真下に見下ろしている。つまり視野角が180度に近く、パースの教科書にやるなと書いてあることだ。クラクラ感はそのせいだと思う。

Erik Demazieres, 
La Bibliotheque de Babel, 1998



2016年10月25日火曜日

「ピカソになりきった男」

Guy Ribes  "Autoportrait d'un Faussaire"

世界的に有名な美術館にも贋作が結構混じっているそうだ。そんなことができてしまう美術界の裏側を、贋作を作っていた本人が暴露した本でとても面白い。

著者のギィ・リブは画力のすごい人で、本物をコピーする贋作ではなく、ピカソ風、シャガール風といった「オリジナルな贋作」を描いている。マティス・ユトリロ・藤田・デュフィ・ダリなども今でもたくさんの美術館に入っているそうだ。

やがて逮捕されてしまい裁判で有罪になる。ところが面白いことにその後も「誰々風」の絵を描き続けているそうだ。だが今では自分の名前でサインしているので犯罪にはならない。それを金儲けではなく純粋に絵が好きな人が買ってくれる。だから今では「画家」としての幸せを感じているという。