2025年8月9日土曜日

写真展「トランスフィジカル」の「絵画の模倣」的な写真

 Tokyo Photographic Art Museum : TRANSPHYSICAL

数年ぶりで東京都写真美術館へ行き、写真展「トランスフィジカル」を見た。写真が発明された19 世紀から、写真がデジタル化された現代までを振り返り、これからの写真がどういう方向へ進むのかを考えさせる展覧会だ。

その中の第1室のテーマが「撮ること、描くこと」で、写真と絵画の関係に焦点を当てている。以下にそのいくつかを紹介。(写真は同展の図録より)

入るといきなりあるのが「アジャンの風景」(1877 年)で、どう見ても印象派の絵画のように見える。実際に印象派全盛の時代の作品で、よく言われるように、生まれてまもない初期の写真は絵画を追いかけていたということがよくわかる。「絵画の模倣」(ピクトリアリズム)の時代だった。なおカラーフィルムがない時代だったのに色がついているのは、3原色それぞれに着色したゼラチンの層を3枚重ねるという方法をとっているという。


「5月の収穫」(1862 年)という横長の大作で、合成写真をやっている。背景の森の写真のネガを一部を切り抜いて、そこに人物の写真のネガをはめ込んでいる。右下の少女の部分のはめ込みパーツも展示されている。


「美濃笠の男、比叡山」(1906 年)は、明治時代の日本人の作品。構図といい、霧の表現といい、日本の伝統的な山水画的な絵画的効果が見事。


「バレエ公演の観客」(1950 年)は、 20 世紀に入ってからの新しい作品。抽象絵画風だが、もはや「絵画の模倣」ではない。絵の具の代わりに、写真という画材を使って、写真でなければできない、絵画的な表現をしている。写真でもあり、絵画でもある、両者の融合だ。


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