Old movie "The Fountainhead"
「摩天楼」は戦後まもなくの 1949 年の古い作品で、建築が題材という珍しい映画。原作は「水源」という小説で、アイデアが泉のように湧いてくる主人公の建築家を意味している。ベタなメロドラマを絡ませた駄作なのだが、ある政治的メッセージが込められている一種のプロパガンダ映画でもある。それが今だに影響力を持っていると言われる。
当時のニューヨークは高層ビルの建築ラッシュで、建築家たちが競い合っていた。アールデコや古典主義的な装飾的建築が全盛で、そんな一般受けねらいの建築家に対して、主人公はまだ異端だったモダニズム建築を提案し続ける。映画にミース・ファン・デル・ローエ風のスケッチや模型がたくさん出てくる。クライアントの要求を拒否して信念を貫くので仕事が来ないが、やがて新しさが認められ、巨匠になっていく。
自分の設計をクライアントが勝手に一般受けするデザインに変更したことに怒り、建設中のビルを爆破してしまう。裁判になるが堂々と自己弁護の演説をする。この演説が映画のハイライトで、制作者が言いたいことを主人公に代弁させている。『大衆のためと言って創造的で有能な人間の足を引っ張るな! 寄生虫のように人に頼っている凡庸な大衆のために優れた個人が犠牲になっては世界の進歩はなくなる ! 』この傲慢な言い分が陪審員の共感を得て無罪になってしまう。
映画の原作者アイン・ランドは政治思想家で、国民全員を平等にする社会福祉政策に反対し、強い者が勝つ自由競争社会であるべきだ、という考えの人で、映画にはそのメッセージが込められている。アメリカ人の多くが今でもその信者で、特にトランプ政権はこの思想の影響を受けていると言われている。その例が、先進国の中でアメリカだけに無かった国民医療保険制度をオバマ大統領が初めて実現したのにトランプ大統領がひっくり返してしまった。自分のことは自分で面倒を見るべきで、国は個人のことに関与しないという考え方だ。(トランプ政権とアイン・ランド思想の関係を知るにはこちら → http://toyokeizai.net/articles/-/150766 )
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