三渓園は地元なのでときどき散歩に行く。年末年始の時期も人で賑わっている。明治時代の富豪で古建築コレクターだった原三渓が、いろいろな場所のいろいろな時代の建物を移築してこの庭園を作った。寺、茶屋、書院、農家、などのさまざまな種類の建物が広い敷地の中に建てられ、美しい景色を作りだしている。この山門もここをくぐったからといって奥にお寺があるわけではなく、単に風景のひきたて役としてここに置かれている。
Temple gate in Sankei-en garden Watercolor
園内いちばん人気の景色がここ。遠景の三重の塔に桜と池の小舟、と典型的な「絵になる風景」で、実際ここを描く人が多い。「絵のように美しい風景」を作るのが目的の庭園のようだ。ネットで「日本庭園ベスト50」というのを見たら、三渓園はかろうじて48位で、上位の多くが西日本にある寺や旅館の庭。自然の風景を凝縮して再現しているが、人が作ったものでないような自然に見せるのが日本庭園の極意らしい。
昔18世紀のイギリスで「ピクチャレスク絵画」というのが流行した。人々が外国旅行をする時代になり、各地の美しい景色を絵はがき的に描くものだった。また実在しない理想の風景を画家が作り上げて描くことも多かった。さらに絵だけではあきたらず、実際にそんな風景を作ってしまおうというので「ピクチャレスク庭園」というのがはやった。森や池に建物を配して風景を作ったが、日本庭園に通じるものがある。
対照的なのがフランス庭園でヴェルサイユ宮殿の庭が有名だ。樹や池を幾何学的に構成して人工的な美しさを作る。その中にあるこの滝と噴水の庭も日本庭園の水の扱い方とはずいぶん違う。最近までやっていた映画「ヴェルサイユの宮廷庭師」は、これを作った造園デザイナーの話だが、その巨匠が庭の美しさは「秩序」であり「秩序とは自然を人間が作り変えることだ」と言う。日本庭園とまったく逆なことがよく分かる。
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