2015年12月25日金曜日

閑人の ☆☆☆☆☆ 映画        「リトルプリンス  星の王子さまと私」

    The Little Prince


公開中のこの映画を観て、もう一度「星の王子さま」を読んでみたが、その本の「訳者あとがき」の中でとてもいい指摘がされていたので紹介したい。

「『星の王子さま』は小さい子供が読むのにふさわしい童話ではありません。この本が子供向きのお話のように受け取られているのは解せないことです。これは本屋の児童書コーナーに置かれて子供たちの人気になる性質の本ではありません。世の中には『童話』と称して、大人が子供向きに書いた不思議な本がありますが、これはその種の童話ではなく、あくまでも大人が読むべき『小説』です。
しかし一方で、子供は子供向きに書いた本でなければ読めないということではありません。子供はそんな離乳食みたいな童話をあてがわれて育つものではないのです。本を読むことが好きな子供なら、やがて大人の読むものを読みたがるようになります。子供にとって本当に面白い本とは、しばしば大人が子供向きでないと思って子供に読ませたがらない本なのです。その意味では、この本も大人の本を読みはじめた子供には魅力的なのかもしれません。」(「新訳  星の王子さま」  訳:倉橋由美子 より)

サン = テグジュペリのベストセラー小説「人間の大地」は、飛行機のパイロットだった作者がサハラ砂漠の真ん中で不時着して生死をさまよった経験をもとに書いた本だ。死を前にして、今までの人生を想い、わいてくる内省や瞑想の念を淡々と書いている。後にその小説をもとに子供向けバーションとして書いたのが「星の王子さま」だ。だから形は冒険とファンタジーがいっぱいの童話でも、子供がほんとうの意味を理解するのはたしかに難しいと思う。(写真:サン = テグジュペリと不時着して大破した飛行機。「人間の大地」より)

この映画では、そこのところがうまく考えられている。9才の女の子とその母親を登場させるのだが、母親は典型的教育ママで、名門校に入れようと毎日毎晩女の子に勉強を強いている。この母親が「大人」の代表で、隣のボロ家に住む年寄りの元パイロット(これはサン = テグジュペリ自身)が「反大人」の代表という構図になっている。この対比によって、「大人になる」とはどういうことか、そしてサン = テグジュペリのメッセージである「大人にならないことの大切さ」が子供にも理解できる(たぶん)しかけになっている。




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