2015年10月4日日曜日

「風景画の誕生」展が面白い

渋谷   Bunkamura  ザ • ミュージアムで開催中(9/9〜12/7) 

もともと絵画とはイコール宗教や神話の物語を描くもので、風景はその背景として描く添え物にすぎなかったのですが、17世紀になってやっと「風景画」というジャンルが生まれ、自立した絵画になったのでした。この展覧会は2部構成で、風景画が「誕生するまで」と「誕生してから」の流れをわかりやすく見せています。

例えばこのふたつはともに宗教画の定番である聖母子像ですが、描かれた年代は100年のひらきがあります。左(16世紀)は窓の外に風景がおまけのように小さく描かれていて、演劇舞台の書き割りのようです。右(17世紀)では面積的にも人間は小さくなり、逆に風景の比重が大きくなってきています。近景から遠景へという空間意識も生まれています。


やがて主題自体も宗教や神話から離れていきます。左の絵では、描かれている人間は普通の庶民であり、神話のような物語性はなくなっています。右ではもはや絵の中心は完全に風景であり、人間は小さい点景でしかありません。風景画の誕生直前です。


そしてついに17世紀のオランダで風景画が誕生します。その始祖と言われるのが有名なロイスダールですが、本展では左の作品(1675年前後)が出展されています。人間は完全に画面から消えて、風景だけを描いています。右の絵は同じころのホイエンの作品で、空の美しさを描いた、今日と変わらない風景画です。


以上、おおざっぱな紹介ですが、キュレーションの勝利のような面白い企画展でした。

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