2014年11月20日木曜日

「ザハ • ハディド」展を観る


「ザハ • ハディド」展(東京オペラシティー  アートギャラリー、10/18〜12/23)


「ザハ • ハディド」展を観ました。とても面白くて、刺激的です。展示されているおびただしい数のドローイングや模型から、この建築家の思考プロセスがよく伝わってきます。ドローイングは普通の建築ドローイングではなく、ほとんど抽象絵画と言えるものです。形態スタディーモデルの模型も、抽象造形作品に見えます。綿密なリサーチと技術的裏付けに基づいて工学的に設計されることが多い一般的な建築デザインのアプローチからすると、このような方法は異端なのかもしれません。しかし、建築、彫刻、絵画が渾然一体となって躍動的に発想していくプロセスは驚きです。

小説家の平野啓一郎氏がこの展への批評のなかで、こう言っています。「芸術の基準は『美』と『崇高』の価値観だったが、20世紀後半以降は、『カッコいい』という異質の
価値観を導入する必要があると思う。本展を見て、人が思わず口にするのは、その『カッコいい』というため息であり、新国立競技場の修正案に幻滅するのは、醜いからではなく、『カッコ悪い』からである。」 (日経新聞、11/13)

新国立競技場のデザインに対して建築界から猛烈な反対論がわき上がり、その結果、日本人建築家による修正案に決まりそうです。平野氏の言う「カッコいい」とは「感じる」価値であって、合理性だけでは計れないものなのだと思います。そのために彼女のデザインはこれまでたくさん「ボツ」にされてきたのでしょう。オリジナルとは似て非なるものに修正されてしまった新国立競技場もそのケースのひとつだと思います。

本展で見せているものではないですが、コンペの表彰式でのザハ • ハディド本人によるプレゼン映像があります。オリジナルデザインのコンセプトがよく分かるのでご覧下さい。


0 件のコメント:

コメントを投稿