2016年12月10日土曜日

「大ラジカセ展」

The retrospective exhibition of boombox design

全盛時代の各社のラジカセから100機種を選んで展示している面白い展覧会。担当した機種が6つもあって、久々に再会できた。

ラジカセは1985年あたりまでで絶滅したが、それはウォークマンとミニコンポの出現の時期。携帯性と音質の両方が中途はんぱになってしまいラジカセが苦しくなる。「デザイナー殺すにゃ刃物はいらぬ、ラジカセの一つもやらせりゃいい」と言っていたくらいラジカセは難しかった。

その最後が今では誰も覚えていない「YOKOHAMA」というシリーズだった。一時は花形だったのにラジカセの存在は家電の歴史から消えてしまった。そんなかわいそうなラジカセたちも「大」のつく展覧会をやってもらって喜んでいるだろう。  (池袋パルコミュージアム 〜12 / 27)


2016年12月8日木曜日

東京都庭園美術館          「アール・デコの花弁」展

Art Deco and the Former Prince Asaka Residence

いつもは展覧会の入れ物になっている建物が、今回は展示物になっている。普段はしまってある調度品をもとどおりにもどして朝香宮邸時代の室内空間を再現している。フランスの超一流アール・デコ作家たちの豪華絢爛な作品を堪能できる。写真右のシャンデリアはルネ・ラリックの作品。(今月25日まで)




2016年12月5日月曜日

ソニービルの形

The shape of the Sony Building

回顧展を見たついでに最後の見納めでもう一度ソニービルを東急プラザから見下ろしたが、このビルの形について「銀座建築探訪」という本に面白いいきさつが書いてある。

銀座の交差点に面した敷地はコーナーを 45° にカットされている。これは「隅欠き」と呼ばれるそうで、明治時代に馬車が角を曲がりやすくするために始まったという。4丁目交差点の「三越」は敷地の形どおり45°にカットした建物にして敷地を100% 無駄なく使っているが、これが普通。
しかし「ソニービル」はひねくれていて「隅欠き」の部分を建物には使わずイベント用の空き地にしている。この3角形の土地の10坪ほどの面積掛ける8階分の延べ床面積が減ることになり、銀座の地価を考えると大変な損になる。設計者の芦原義信さんがこれを提案したら当時副社長の盛田さんが即決で OKしたそうだ。

エレベータで最上階へ登ってから階段で降りてくる構造は、盛田さんが「グッケンハイム美術館のように」と会議で言ったとき皆キョトンとしていたが芦原さんだけはピンときてすぐにあの構造のスケッチを描いて見せたという。設計者とクライアントのいい関係を感じる。

2016年12月2日金曜日

江戸東京たてもの園

Edo-Tokyo Open Air Architectural Museum

小金井にある「江戸東京たてもの園」は江戸時代から昭和までの東京にあった古い建物を移築して集めた野外博物館だが、初めて行ってみた。

建築史の用語で「看板建築」という名前がついている建物が何棟かあり、これが面白かった。昭和初期にはやった商店建築のスタイルで、関東大震災の経験から、防火のために木造の表面に銅板やモルタルやタイルなどを貼った作りになっている。そのため表面がのっぺりしたところに色や模様をつけて看板がわりにする。横からの写真(右)で、昔ながらの木造家屋の表面の皮一枚だけを「モダン」にした、まさに「看板」なのがよくわかる。どこか懐かしく微笑ましいこういう店は、わりと最近まで見かけた気がする。





2016年11月29日火曜日

映画 「Creation」


「Creation」という 2009 年のイギリス映画を観た。進化論を提起したダーウィンの生涯を描いた地味な伝記映画だ。しかしこれがアメリカで公開禁止になったのだが、そのことの方が映画そのものより面白い。

人間は神様が創ったと信じるキリスト教徒にとって、猿が人間の先祖だという進化論は許せないものだったが、150 年後の今では世界中で当たり前のことになっている。しかし保守的なキリスト教信者が多いアメリカでは今でも大多数が進化論を否定していて、州によっては学校で進化論を教えることを禁止しているという。今年の大統領予備選でトランプと競ったクルーズ候補は「進化論は真っ赤な嘘だ」という選挙スローガンを掲げていたが、それが票になるのがアメリカだ。

だから映画は猛反発を受け「映画を公開すれば、配給会社には神とその忠実なしもべであるアメリカ国民による正義の鉄槌が下るだろう」と攻撃されて公開中止に追い込まれた。

(映画は日本でも未公開で、DVD化もされていないが、輸入DVDで観れる。)


2016年11月26日土曜日

小田野直武展

こんなすごい人が江戸時代にいたとは知らなかった。西洋絵画を勉強して遠近法と陰影法をマスターしたが、ただの真似ではなく日本絵画と融合したオリジナルな絵を残した。ポスターに使われている絵は50号くらいの大作だが空気遠近法が見事。前景に極端に大きい物を置く浮世絵の構図が印象派に影響を与えたとよく言われるが、その浮世絵は小田野から影響を受けていたという解説があった。こちらが元祖らしい。 (サントリー美術館)


2016年11月23日水曜日

有楽町で逢いましょう



有楽町駅で電車を待っていると、ホームの目の前にあるビックカメラの巨大広告が嫌でも目に飛び込んでくる。この建物はかつてはそごうデパートだったが、その頃はもうすこし落ち着いた雰囲気だった。

昭和33年にヒットした「有楽町で逢いましょう」はそごうがモデルで、例の『あなたを待てば雨が降る・・』の歌詞の中にそごうとその周辺の情景が盛り込まれている。『駅のホームも濡れたろう ああ小窓にけむるデパートよ・・』と有楽町駅も出てくる。

これはそごうが仕掛けて作らせた曲で、デパートの立地としては銀座や日本橋に比べてイメージ面で不利な有楽町のイメージアップを狙った一種のCMソングだった。当時そごうの宣伝部にいてこれをやったのが大学の大先輩のKさんだったが、ブランド戦略の成功例として「有楽町で逢いましょう」のことをよく自慢していたのを思い出す。