Oppenheimer
「オッペンハイマー」が今年のアカデミー賞の有力候補になっているようだ。アメリカで公開されたのが去年の夏だったのに、日本公開はやっと今年3月になるという。それは「被爆国日本では批判されるから」という訳の分からない理由のようだが、被爆国日本だからこそ原爆開発の真実を知りたいと思うのだが。
その映画公開直前の今、タイミングよく NHK がドキュメンタリー番組「映像の世紀」で「マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪」( 2 / 19 )をやっていた。今までよく知られている事実のほかにもさまざまな秘話が出てきた。
オッペンハイマーは「原爆の父」と呼ばれ、「戦争を終わらせた英雄」として讃えられたが、広島・長崎の地獄のような惨状を見て、生涯にわたって後悔し、罪の意識に苛まれ続けた。そして死ぬまで一貫して核兵器開発に反対をした。戦後は米ソ間の核開発競争の時代だったので、オッペンハイマーは一転して、反米科学者として糾弾され、公職を追放された。番組ではオッペンハイマー以外にも原爆開発に関わったさまざまな人物が登場する。
アインシュタインは、ドイツの原爆開発が進んでいることに危機感をおぼえ、アメリカも開発を急ぐよう政府に提言し、それがマンハッタン計画開始のきっかけになった。そこには亡命ユダヤ人である自身のドイツに対する憎しみという個人的な感情があった。
トルーマン大統領は、もう日本の降伏は目前だから原爆を使う必要がないという周囲の意見を振り切って投下を命じた。それは戦勝大統領という名誉を得るためと、対ソ連牽制のためという政治的理由だった。番組で、オッペンハイマーが後悔していると言ったのに対して大統領は「あの泣き虫野郎」と言ったという映像が出てきた。
ローレンスは天才物理学者だが、戦後オッペンハイマーらの核兵器反対の声を押し切って、原爆の何倍も強力な水爆を開発した。それはオッペンハイマーより先輩である自分が原爆で遅れをとったのを取り戻そうとする功名心のためだった。
仁科芳雄はオッペンハイマーらと同じくドイツのハイゼンベルクのもとで原子物理学の研究をしていたが、戦争になると軍部からの依頼を受けて原爆開発研究をした。しかしアメリカの資金力には到底かなわず終戦を迎えたが、戦後はオッペンハイマーらとともに核兵器反対運動に加わった。
これらの事実を紹介することで番組は、はたして原爆の罪をオッペンハイマー1人に押し付けていいのかと疑問を投げかけているようだ。今度の映画でも予告編によれば、オッペンハイマーがマッカーシー委員会で共産主義者だと指弾される場面があるようで、どう描かれているか興味がある。
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