2024年2月13日火曜日

アメリカ映画とキリスト教

「Bible and Cinema」

「アメリカ映画とキリスト教   120 年の関係史」という本で、著者の木谷佳楠はアメリカ映画についてこう言っている。アメリカは建国以来、その精神を支えてきたのがアメリカ独特のキリスト教的価値観だった。「神の国アメリカ」を偉大にするという使命のためにキリスト教会は「映画」というマスメディアをツールに使ってきた。圧倒的な資金力をもとにして、自分たちの宗教的価値観に基づく映画を作っている。アメリカ映画に繰り返し見られるキリスト教や聖書の影響はさまざまなジャンルに及んでいる。例えば、

・アクション映画や戦争映画での善悪二元論
・ディザスター映画やディストピア的 SF 映画での聖書的終末論
・アメリカン・ヒーローに反映されている救世主 (メシア) 思想

それらの映画はプロガンダ的なメッセージを前面に出す訳ではなく、普通のエンターティンメント映画として作られているが、聖書の知識のある人にはそれと気づく表現が用いられている。(以下は「ハリウッド映画と聖書」による。)例えば、

「イングロリアス・バスターズ」
・筋書きやテーマを展開するための方法として聖書を用いる。(例
「イングロリアス・バスターズ」:ナチス狩りをしている米軍将校が捕虜の額に印をつけるシーンは、聖書の創世記にある「カインとアベル」の物語を引喩している。)

・聖書のイエスを想起させるキリスト的人間像を描く。(例「ショーシャンクの空に」:無実の罪で刑務所に入れられた男が他の受刑者を援助し、最後に自分が脱獄に成功する主人公は、救済と受難そして復活というキリストの生涯になぞらえている。)

「ショーシャンクの空に」
・道徳や倫理の源泉としての聖書を用いる。(例「3時10分、決断の時」:悪党を刑務所に送ろうとする男の格闘という、善悪の倫理が主題の映画だが、筋書きや主人公の風貌やセリフや小道具などで聖書を想起させている。)

・破壊や救済といった主題を表現するために聖書を用いる。(例「アヴァター」:自然と人間の調和が調和している惑星と、自然環境を破壊している地球とが争うというストーリーの中に創世記などの聖書的要素がたくさん盛り込まれている。


キリスト教や聖書の知識のない日本の観客に対して「アメリカ映画とキリスト教」はこう言っている。映画の根本にある宗教性を含めた「原材料」にもっと注目するべきだと。健康にいい食べ物かどうかを知るために「原材料」を知ろうとするように、映画がどのような「原材料」から製作されたものかを知り吟味するべきだと。


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