2020年9月3日木曜日

フランク・ロイド・ライトがモデルの 小説「水源」

「The Fountainhead」 by Ayn Rand

アイン・ランドの小説「水源」は、「摩天楼」という題名で映画化されていて、そちらは観ているが、改めて原作を読んでみた。小説の形をとっているが、アイン・ランド自身の思想を主張するための本だ。主人公が建築家で、彼の建築理念を語らせることを通して自分の思想を語っている。そしてこの建築家のモデルが、あのフランク・ロイド・ライトだという点も興味深い。

ライトは伝統主義建築を否定したモダニズム建築の先駆者だが、新しいアイデアが泉のように湧いてくる天才だったので、題名が「水源」になっている。主人公は過激な演説をする。「自分の革新的な建築を理解できない凡庸な大衆を自分は嫌悪する。無知で怠惰なくせに依存心ばかり強い寄生虫的人間が、才能のある創造的な人間の足を引っ張っている。」優れた人間を、大衆は邪魔するなというのだ。

アイン・ランドは、能力がある人や努力した人が勝者になるのは当然とする市場原理経済を主張し、個人の能力を最大限に発揮できる自由至上主義社会を唱えた。アメリカン・ドリームを目指して社会を自力ではい上がっていく人を尊び、敗者になった人が社会のせいにするのを嫌悪した。そして貧しい人たちを社会福祉政策によって国が救済する平等主義社会に反対した。それを建築家の言葉で代弁させている。

アメリカ政治はこの思想の影響を受けてきた。トランプ大統領はこの本の愛読者だと公言しているそうだが、確かに政策は近い部分が多い。国民も社会的弱者(多くは黒人層)のために税金を使うことに反対する。おかげでビル・ゲイツのような大金持ちの事業家を輩出した反面で、アメリカはいまだに先進国の中で国民健康保険の無い唯一の国だ。だから貧しい人はコロナに感染しても病院に行けないので、結果的に死亡者数が世界一になる。


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