以前、ある先生に絵を見てもらう機会があった。持参した作品を並べたら、見た瞬間、初対面なのにいきなり「あなたアンドリュー • ワイエスが好きでしょ?』と言われてびっくりした。ワイエスは好きだが、真似しようとはまったく思っていないし、例えしたとしてもできるわけはないし、実際似ていることはないと思うので、なぜそう思われたのか不思議だった。そう感じさせる影響のような何かがあるのだろうか。
それでワイエス談義になったが、先生の言いたかったことは、「あなたはワイエスが好きなようだが、その本当の良さは分かっていないですね。」ということだった。(実際にはそんなきつい言い方ではなかったが)そして、この絵を勉強するといいですよ、と言って示してくれたのがこの絵だった。
この絵も画集でよく見てはいたが、あまり注目せずに、どちらかというと通りすぎていた。だから前回の「その1」で自分流で書いたワイエス魅力にこの絵があてはまる項目がない。「懐かしい風景」とか「写実的描写」などがそんなに前面に出ている絵ではない。しかし、この絵にワイエスのエッセンスが凝縮されているという。それは風景を「写生」しているのではなく、風景の素材を使って絵を「構成」している点だという。そのため、ほとんど白と黒だけに単純化し、そのリズムやバランスの面白さで絵を「作っている」のだ。写実力のすごさに目を奪われてそこばかり見てしまうが、実はちがうということだった。実際、本によると、この大砲はワイエスがアンティークのオークションで買ったものを描いたので、実際にこのような風景があったわけではないそうだ。しかしその「構成」がうそではなく、本当のように見せてしまう説得力がある。そういう目であらためて他の絵も見てみると、同じことが見えてきて、なるほどと思う。
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