2019年1月17日木曜日

「右か左か、それが問題だ」?    小野田直武の「不忍池図」は不思議か



小野田直武は江戸時代に西洋絵画の技術を習得した最初の人で、この「不忍池図」でも空気遠近法がうまく使われている。

「視覚心理学が明かす名画の秘密」(三浦佳世)という本で、西洋絵画では統計的に、左光源の絵が圧倒的に多いという理由で、右光源のこの絵が「不思議な感じがする」と決めつけている。しかし2年くらい前の「小野田直武展」でこの絵を見たが、同書の言う不思議さは感じなかった。

しかしそれとは別の点で不思議に感じたことがあった。ひとつは、右側の木の明暗コントラストに比べて鉢の明暗差が少なく、弱い光で描かれている点。もうひとつは、鉢植えの花のスケールが風景と合っていない感じがする点で、この絵のアイ・レベルと花の視角からすると、地面にぺったり座った状態で 50 cm くらいの至近距離から描かないとこうならないはずだ。なんとなく花が風景に溶け込んでいない感があるのはそんな理由からだろう。おそらくこの花はこの場所にはなく、花の静物画と池の風景画を合体させたものだと思う。そうだとすれば、この時代としては画期的だっただろう。

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