2018年8月6日月曜日

「藤田嗣治展」の戦争画

Foujita

「藤田嗣治展」に2つの戦争画が出展されている。「アッツ島玉砕」と、この「サイパン島同胞臣節を全うす」だが、これには圧倒される。崖っぷちに追い詰められて自害する民間人の悲惨な姿を描いている。軍からの依頼により戦意高揚のために描くのが戦争画なのに、この絵はどう見ても「反戦画」に見える。


藤田の戦争画は当時から評判が悪かったそうで、職人的なテクニックだけで描いた思想の無い絵だ、などと非難されたという。戦後はさらに批判が強く、ごく最近でも、ある有名な美術評論家が「野次馬の嗜虐的な興味にかられて、むごたらしい場面を偏執狂的に楽しんで描いている」とまで酷評している。(「美術と戦争」より)

しかしこんな話があったそうだ。戦争直後アメリカから戦争責任を追及されることを恐れた画家たちは藤田一人に責任を押し付けようとたくらむ。そして GHQ に藤田が呼び出されるのだが、そこで言われたのは戦争責任どころか、戦争画の美術的価値を認め、アメリカで展覧会をやるので協力してほしいという依頼だった。「藤田嗣治  異邦人の生涯」による)

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