2021年1月29日金曜日

巨匠たちのパステル画の技術

Pastel techniques of masterpieces

パステル画といえば、ドガとルドンだが、他にもピカソ、ゴッホ、シャガール、スーラ、マネ、など有名な巨匠たちもパステル画を描いている。しかしパステル画では、彼らの油彩とはまったく違う画風の絵になるのが面白い。油彩や水彩の絵の具は、顔料を油や水で溶いたものだが、パステルは純粋な顔料そのものを紙に乗せていくので、色の鮮やかさが特徴だし、そもそも筆も使わない。だから自然に画風が違ってくるのだろう。

ドガはパステル画の名手だが、色を塗りつぶさずに、ハッチング的に描いている。パステルの先端を使って線で描くので、色どうしが混ざらず、それぞれの色が活き活きしている。例えば背中の部分で、補色どうしのピンクとグリーンの線の両方が混ざることなく、彩度が活きている。(「浴盤」)


対照的なのがクレーで、黒線で区切った各部分を単色で塗りつぶしている。しかし目の粗いカラーペーパーに描くのがパステル画の基本なので、塗りつぶしても紙の色が透けて見える。この場合は、濃い青色の紙を使っているが、その青がピンクの下に透けて見えていて、色の鮮やかさを際立たせている。(「ヴェネチアの小部屋」)



とかくパステル画ではソフトな感じにしようと指でこすってしまいがちだが、こすると色が混じり合って単調になってしまう。ルドンは例えばこの絵のバックで、ピンク・黄色・紫色などをこすってはいるが、色が互いに混ざらないようにしている。それが単調さを防ぎ、微妙な色の変化をもたらしている。(「青い花瓶の花」)


ムンクのパステル画は素描的だが、繊細でしかもスピーディな線の重なりが素晴らしい。コンテや木炭に似て、
速写性もパステルの特徴の一つだ。(「病める子」)



ピカソにもパステル画がある。しかし油絵的なのは、
油性パステルでも使っているのかもしれない。普通のピカソ風ではないのは、”ちょっとスケッチ” のつもりだろうか? たしかに戸外でのスケッチには簡便なパステルは向いている。



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