ロンドン大学建築学科教授のステッドマンという人が、フェルメールの絵に描かれた空間を遠近法の知識をフルに使って解明していくという、推理小説さながらの面白い本。最近某「視覚心理学者」の、フェルメールは「現実にあり得ない空間を描いている」という、とんでもない説が出回っている( 三浦佳世「視覚心理学が明かす名画の秘密」)ので、前にも書いたことがあるが、この本をもう一度紹介したい。
フェルメールの室内画は、自宅のアトリエで描かれたと言われているが、それはどんな部屋だったのかを実際に復元してみようというプロジェクトで、当時の写真はもちろん資料もないから、描かれた絵だけを手掛かりに解明していく。
遠近法が正しく描かれた絵は、物の寸法の比率を正確に表現しているはずだから、逆に絵から部屋の形を割り出していける。その結果、部屋の形がわかり、図面を描いて、模型を作ることができた。そして模型をフェルメールの絵と同じ視点から写真を撮る。するとドンピシャで絵と一致していた。フェルメールの遠近法がいかに正確だったかを科学的に証明している。
左が模型の写真で、右が実際のフェルメールの絵。驚くほどぴったり一致している。
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