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2014年12月12日金曜日
ホイッスラーの「画家の母」が登場した映画
先週、当ブログに、今開かれている「ホイッスラー展」(横浜美術館、〜’15 . 3. 1)について書きましたが、その中で、彼の最高傑作である「画家の母」についてふれました。そのとき、この絵が「ビーン」という、10数年前のドタバタコメディ映画に登場していたことを思い出し、もう一度見てみました。けっこうヒットしたので記憶にある方もいるかもしれませんが、改めて見てみると、コメディ映画としてはあまりレベルが高くはないですが、ホイッスラーがアメリカでどう受けとめられているかを知ることができます。
画家の伝記映画は別として、エンタメ映画に登場する場合の絵は、誰でも知っている名画で、しかもとんでもない高価な作品でなければなりません。この映画でもホイッスラーの絵を汚したり壊したりハチャメチャにしてしまうストーリーがコメディとして成り立つのはこの絵がそういう名画だからです。
(左)学芸員が「画家の母」をパリの美術館から 50 億円で購入
(中)ドジな主人公が薬品をかけてしまい、絵がとんでもないことに
(右)同サイズのポスターを貼ってごまかし、なんとか除幕式をきり抜ける
(1997年、アメリカ•イギリス協同制作、メル•スミス監督)
フランスの美術館からアメリカの美術館がこの絵を買い取ることから始まる話だが、除幕式で講演をするゲストとしてロンドンから呼ばれた美術研究者は実はまったくの素人でしかも大ドジ。彼がこの絵に鼻水をかけてしまい、それを拭こうとしたハンカチにインクが着いていて絵が真っ青になってしまい、あわてて拭き取ろうとシンナーでゴシゴシすると絵の具が溶けて「画家の母」の顔が消えてしまう• • • といったドタバタが続くが、それは省略します。最後に、購入費用を寄付した美術館後援者である将軍の除幕式でのスピーチが面白いです。「自分は絵の愛好者ではないが、愛国者だ。ピカソの絵なんか落書きだ!そんなフランス人から我が国の絵を取り戻したのだ!」
ところで、アメリカではクリスマスプレゼントなどで画集を贈るのが一般的らしいのですが、画集の人気作家ベスト3は、アンドリュー • ワイエス、エドワード • ホッパー、ノーマン • ロックウェル、だそうです。すべてアメリカン • リアリズム系のアメリカ人作家ばかりでヨーロッパの画家は入っていません。逆にワイエスなどはヨーロッパではほとんど無視されている画家だそうです。アメリカ絵画は、世界のなかでは我が道をゆくような存在のようですが、そんな関係がこのスピーチにも反映しているのでしょう。
ホイッスラーはアメリカ人ですが、生涯のほとんどをイギリスで活動していて、イギリス美術家協会の会長にまでなったりしました。美術史のなかで国際的に認められているアメリカ人画家は少ないのですが、彼はその一人ななわけです。だから映画では、この絵がアメリカの誇りとして扱われていて、例の将軍が言います。「これは『画家の母』だが『アメリカの母』でもある。お帰りなさい!」と。
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