2024年12月3日火曜日

「回想」で物語る名作映画

 

映画の回想シーンは、「フラッシュバック」と呼ばれるように、映画の途中で挿入されることが多い。だが物語全体が回想として語られる「回想形式」の映画もある。そこでは「過去」と「現在」の間に「時間の流れ」があることと、しかもその二つの時間のあいだの「つながり」が重要な意味を持っている。冒頭で回想を語る人物が登場して、その語りから物語が始まる。そういう構造の映画の中から名画を3つ。


「タイタニック」
海底に沈んでいるタイタニック号を深海探査船が調査していると、船室から一枚の人物デッサンが発見される。事故の生存者で、100 歳を超えている老婦人が、絵のモデルは自分だと申し出る。そして 84 年前のタイタニックの体験を語り始める・・・
映画はその老婦人の「回想」として語られていく。それによってタイタニック事故と、そこでの主人公のラブストーリーが「現在」起きているかのような生々しいものになっている。

「スタンド・バイ・ミー」
青春映画の名作だが、映画は、男が車を運転しているシーンから始まる。その画面に、男のモノローグがボイスオーバーで重なる。少年時代の遊び仲間に会いにいくところだとわかる。そして物語は男の「回想」として進む。
4人の少年が、森の中にあるという噂の死体を探しにいく冒険旅行の中でさまざまな経験をし、成長していく。そして最後に再び現在に戻り、4人の今の姿が紹介される。繊細な感受性の子は小説家になり、正義感の強い子は弁護士になり、粗野な悪ガキは日雇い労働者になり、ノロマな肥満児は商店で働いている。4人それぞれの性格がそのまま今につながっている。主人公の「懐かしさ」が強く伝わってくるのは「回想形式」の効果だ。

「きみに読む物語」
認知症になって、老人ホームに入っている老いた妻を見舞いに夫が毎日訪ねてくる。そのたびに物語を読んで聞かせる。妻はその物語が大好きで、「それからどうなるの?」と、続きを楽しみにしている。ところがその物語とは昔、夫が書いていた日記なのだ。妻と過ごした若い頃の甘く幸せな日々が綴られている。
映画はラブストーリーなのだが、それを「回想形式」で語っている。回想シーンと現在のシーンを交互に映すことによって「切なさ」を強烈に醸し出し、視聴者の涙を誘う。


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