2014年10月13日月曜日

「マレフィセント」の風景

ケネス • クラークの「風景画論」の中で、現代における「幻想風景画」の例としてディズニー映画があげられていることを前回書いた。その一例として「アナと雪の女王」の風景を取り上げたが、もうひとつの例として、やはり最新作の「マレフィセント」について見てみる。この映画は、名作アニメ「眠れる森の美女」の現代版リメイク作品だ。



二人の主人公の背景に描かれている森の風景が、ねじれてからみあう木や、とげとげしい枝など、不気味で恐ろしげに描かれている。マルセル • ブリヨンは「幻想芸術」でこう書いている。「森は非合理の世界、人間の想像力はこれらの森を戦慄と崩壊の場所として捉えたので、童話でさえそうした観念を反映して、森を悪のすみかとして描いた。」

森は人に恵みを与えてくれるものと捉える日本では、このように人間に対して敵対的なものとして森や自然を描く伝統はほとんどないが、「風景画論」でケネス • クラークは、ヨーロッパでは森というものが人間の自然に対する不安と恐怖のシンボルとして絵に描かれ続けてきた長い歴史がある、といっている。

このような幻想の森を描いた画家のひとりが有名なカスパー • ダヴィッド • フリードリッヒだ。廃墟の寺院や墓地とともに描かれた裸の木々は身をよじらせた不吉な形をしていて、死の森を象徴している。死を通して神のもとへ回帰できるという作者の宗教的観念を表現した絵と言われている。



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