小説「アイ・アム・レジェンド」(1 9 5 4 年)を原作にした、同名の映画「アイ・アム・レジェンド」(2 0 0 7 年)にその結末が出てくる。
流星の地球への衝突や、大洪水や、疫病の大流行などで人類が滅亡するという、黙示録を基にした映画は、設定をいろいろ変えてたくさん作られてきたが、この映画もその一つ。聖書の黙示録には、神が人間たちの悪行に怒って、罰として人類を絶滅させる(終末)が、わずかな善い人だけには救世主が迎えに来て(召命)、天国へ導かれ(ノアの箱舟)、彼らが新しい善い世界を創る、という未来の予言が書かれている。
黙示録はキリスト教社会の根底でずっと生きてきた思想だが、9.11 以降は性質が変化した。イスラム教徒のテロによって崩壊した貿易センタービルの映像は、黙示録の終末のシーンとしてアメリカ人に衝撃を与えた。その結果、キリスト教を絶対とするキリスト教原理主義と、外敵からアメリカを守るという排外主義が結びつき、黙示録が政治的な色合いを持つようになった。この映画のラストシーンが「教会」と「星条旗」と「軍隊」であることは、アメリカ人であり、キリスト教徒である人間しか、この「ノアの箱舟」に乗せないこと、そしてそれ以外の人間は力で排除するということを意味している。(この説明は、アメリカの前大統領の政治を考えると納得がいく)