Hitler vs Picasso and Others
60 万点もの名画がヒトラーに略奪されたのはよく知られているが、それらの作品はナチスの資金にするために競売にかけられたり、秘密の場所に隠匿された。今でも行方不明の作品を探し出し、奪還しようとして執念を燃やしている人たちを描くドキュメンタリー映画。
(ヒューマントラストシネマ有楽町などで上映中)
奪ったのは、ゴッホ、ムンク、ミロ、シャガール、モネ、クレー、ピカソ、など、ヒトラーが嫌いだった現代絵画のほとんど全てだった。それらを笑いものにするために、「退廃芸術展」を開く。その一方で、伝統的な写実絵画をナチズムの思想に合致する国家公認芸術に認定して「大ドイツ芸術展」を開催する。
上は「退廃芸術展」の下見をするヒトラーだが、作品は額にも入れず床に並べている。下は「大ドイツ芸術展」の下見で、こちらは堂々とした展示。
(画像は同映画予告編より)
(面白いのは、それまでのドイツは現代絵画の最先進国だったから、入場者数は「退廃芸術展」の方が圧倒的に多かったという。)
最も激しく弾圧されたのは、表現主義絵画(写真上)だが、その破壊力をヒトラーが恐れたからだった。だから略奪に抵抗したピカソは「絵画は飾るためのものではなく、戦うための武器だ」と言った。映画のタイトルはそこからきている。
なお、イーゴリ・ゴロムシトク著「全体主義芸術」は、ヒトラーの芸術政策の詳細な研究をしていて参考になる。
映画「アドルフの画集」は、現代絵画を憎悪したヒトラーの原体験を描いている。画廊で絵の売り込みに失敗するが、その時、表現主義の展覧会が華々しく開催されている。自分の絵の古臭さを知って、画家の道をあきらめる。