2017年8月31日木曜日

アーチの美しい建築 横浜指路教会

Yokohama Shiloh Church

明治生まれのプロテスタントの教会。オリジナルはレンガ造りだったそうだが関東大震災で崩れて、大正 15 年にこの形に建て直されたという。ゴシック様式の建物で、各所に尖頭アーチのテーマが使われている。

正面玄関上部は尖頭アーチが何層も重ねられて奥行きを作っている。ゴシック教会の代表といえばパリのノートルダム大聖堂だが、それとほぼ同じ重厚な造りだ。

礼拝堂は祭壇や装飾がなく、十字架さえもない簡素さ。そのためアーチの美しさが際立っている。見学した時、他に誰もいなかったがパイプオルガンが演奏されていた。その音はこの天井の高い空間によく響き会っていた。

2017年8月27日日曜日

横浜 馬車道の「牛馬飲水」

Bashamichi Street, Yokohama

牛馬が陸上交通の手段だった明治時代に「牛馬飲水」という設備があった。牛馬用のガソリンスタンドだ。名前どおり明治初期すでに馬車が多かった「馬車道」に今もひとつ残っている。

また、馬車交通のために道路の整備もされて、馬車道はガス灯や街路樹などの発祥の地だった。ガス灯は当時のロンドンをそのまま模したものだそうだ。ということで馬車道では、標識、ベンチ、敷石などあちこちで馬がシンボルマークとして使われている。





2017年8月24日木曜日

映画「少女ファニーと運命の旅」

Movie   "La Voyage de Fanny"

毎年8月になると戦争映画がたくさん来る。しかし戦後何十年もたったからだろうか、もうドンパチだらけの単純な戦争ヒーローものは少なくなった。(「ハクソー・リッジ」あたりはその名残りか) 今回は「少女ファニーと運命の旅」と「ヒトラーへの 285 枚の葉書」を観たが、どちらも秀作だった。「少女ファニー 〜」を観て、戦争の犠牲になった子供たちを題材にした戦争映画を思い出してリストアップしてみた。


特にこの2作は、戦争の恐ろしさと残酷さをまざまざと見せつけるショッキングなすごい映画。

「サラの鍵」 
      小さな女の子の無邪気な思いやりが・・
「ソフィーの選択」 
   子供を "選択" させられた母親。むごすぎる。


そのほかの秀作
 「ライフイズビューティフル」  「悪童日記」
 「縞模様のパジャマの少年」  「やさしい本泥棒」
 「ふたつの名前を持つ少年」  「さよならアドルフ」      
 「黄色い星の子供たち」

そもそもこの名作もその先駆けだろう
 「禁じられた遊び」

2017年8月21日月曜日

古典建築 in 横濱「盾飾り」

Classical architecture in Yokohama

横浜には明治から戦前期にかけて建てられた古典様式の建築が残っている。普段通りすぎているそんな建物を改めてディテールだけに注目しながら歩いてみた。なかでも玄関の上に設置された装飾レリーフ「盾飾り」が面白い。建物のシンボルあるいは守護神のようなものらしい。

BunkaArt 1929
  (旧第一銀行横浜支店)
堂々としたローマ風建築。ふくろうモチーフの盾飾りがとても美しい。
横浜第二合同庁舎 
  (旧生糸検査所)
輸出生糸の検査所だったので盾飾りは成虫の蚕。胸に旭日旗のついた強そうな蚕なのは築が1926年という時代の反映か。
神奈川歴史博物館
  (旧横浜正金銀行本店)
明治の壮大なバロック様式建築。アーチのキーストーンになっている盾飾りは名前どおり盾の形で迫力がある。
東京芸術大学
  (旧富士銀行横浜支店)
芸大の映画専攻の校舎になっている小ぶりな建物で、盾飾りは優しい植物模様。

2017年8月18日金曜日

絵の中のインテリア(5)「片隅」

Interior in paintings (5)  "Corner"

アンドリュー・ワイエスが親しかった隣家の家族が亡くなった後にその家で描いた。掃除道具は使っていたままの姿だし、色のはげたドアについた犬の引っ掻き傷もそのまま。ワイエスは、その人たちがまだそこに生きているかのように感じながら描いたという。

家の片隅のありふれた物の中に人の生活の痕跡を見つけて描いた絵にやさしいまなざしを感じる。

暴風雨になった時、玄関に濡れたコートが掛かっていた。出かけていた妻が帰ってきたらしい。絵の中にはいなくても彼女はそこにいる・・ と愛妻家のワイエスは書いている。

2017年8月15日火曜日

絵の中のインテリア(4)「洗面所」

Interior in paintings  (4)  "Bathroom"

スペインのアントニオ・ロペスは超リアリズム画家として有名だが、家庭内の洗面所、トイレ、台所など普通あまり画題としては取り上げられない場所をクローズアップで描き、ものの実在感に迫っている。

旧式できれいとは言えないこの洗面所の絵は生活感がにじみ出ている。下のトイレも同じく、さびや汚れのリアルな表現がすごい。冷蔵庫は「新しい冷蔵庫」というタイトル通り買ったばかりの新製品を徹底的に即物的描写をしている。なお扉の幅が広すぎるのは至近距離で描いているための広角レンズ的な歪みで、パースの狂いではない。

2017年8月12日土曜日

絵の中のインテリア(3)「ドア」

Interior in paintings (3)  "Door"

ドアが閉まっていれば中に人がいるし、開いていればいないはず。この家はすべてのドアが開いたままで、家具も無く、空き家のように見える。しかしよく見るとドアのかげに闇に溶け込むように黒服の女性が立っている・・・

いるべき部屋に人がいない空虚感と、そこにいるはずのない人がいる不安感、を感じさせる空間をドアを使って表現している。

デンマークの象徴主義の画家ウィルへルム・ハンマースホイの「室内  ストランゲーゼ 30 番地」という絵だが、他にも同様のテーマの作品がたくさんある。


2017年8月9日水曜日

絵の中のインテリア(2)「窓」

Interior in paintings (2)  "Window"

もう昼間だが起きたばかりの女性が窓の外をぼんやりとながめている。夜が長い生活なのだろう。エドワード・ホッパーは大都会ニューヨークに住む人たちの孤独感をテーマに描いた。自分にとっては都会が「かかわりのない外」だという感情が「窓」で表現されている。

ホッパーには逆に窓から家の中をのぞき見している絵も多い。映画「裏窓」だ。この場合も、光景の手前に「窓」を描くことで、それが自分と無関係の観察対象でしかないことが強調されている。左は着替えて寝ようとしている一人暮らしの女性、右は会話のない夫婦で、どちらも寂しい光景だ。


2017年8月6日日曜日

絵の中のインテリア(1)「椅子」

Interior in paintings (1)  "Chair"

椅子が描かれている絵をいくつかピックアップして、大まかに年代順に並べてみた。これを椅子そのものでなく座っている人間の姿勢に注目して見ると面白い。きちんとした姿勢で座っていたのが時代とともにだんだん自由な姿勢になっていく。日本的に言えば正座だったのがだんだん膝をくずしていくような。椅子の形が規定しているあるべき座り方から逸脱していく。現代画家バルテュスの絵でその極致になる。

ホイッスラー「画家の母の肖像」 セザンヌ「赤い肘掛け椅子のセザンヌ夫人」  

モジリアニ「椅子に肘をつくジャンヌ・エピュルヌ」 マティス「安楽椅子にかける女」

バルテュス「美しい日々」

2017年8月3日木曜日

レオナルド・ダ・ヴィンチ展

Exhibition  " Reonaldo Da Vinci "

ダ・ヴィンチの「手稿」のスケッチにもとづく再現模型の展覧会。今までも何回かあったが、今回は夏休みの子供向け企画なので、歯車、ベアリング、ピストンといった単純な機械要素的なものが多い。

初めて見るものもあった。例えば「自動回転肉焼き器」というピザ窯のような装置。熱せられた上昇気流でファンを回し、その運動を歯車とチェーンで串に伝えて肉を回転させながら焼くというもの。ピタゴラスイッチ的なバカバカしさが面白い。ダ・ヴィンチ自身も実用性があるとは思っていなかったたはずで、遊びないし思考実験だったのだろう。 (横浜そごう美術館、〜10 / 15 )