2017年2月27日月曜日

「ラ・ラ・ランド」の車

The cars in  " La La Land "

先日、「ラ・ラ・ランド」について書いたが、今日(2 / 27)のニュースによれば予想に反してアカデミー賞を逃したようだ。映画界の反トランプ気分が影響したのか。それはともかく蛇足的なことをひとつ。

「ラ・ラ・ランド」は超車社会のロスが舞台なので、車やフリーウェーのシーンがたくさん出てくる。女優志望のエマ・ストーンが乗っているのがトヨタ・プリウス。一方で昔ながらの古いジャズにこだわるピアニストのライアン・ゴズリングが乗っているのが 35 年前の古いアメ車のビュイック・リビエラ。二人は目指しているものの違いから最後は別々の道へ進んでいくのだが、そのことを車で象徴的に表している。

(映画の手法として、車はよくこういうふうに使われる。映画に登場する車を調べるのに「IMCDb(Internet Movie Cars Database)」というサイトが便利。題名を入力するとその映画に登場するすべての車のデータが出てくる。よくもこれだけ集めたものだとあきれるくらい徹底している。)


2017年2月24日金曜日

今週の映画



「マリアンヌ」◯
緊迫感たっぷりで最後まで引き込まれる。ラストの空港のシーンが「カサブランカ」を思わせるドラマチックなエンディング。

「ラ・ラ・ランド」◎
設定は現代だが、昔ながらのレトロなミュージカルの雰囲気そのままの映画。エマ・ストーンがいい。グリフィス天文台などロスの名所がたくさん出てくるのも楽しい。アカデミー賞最有力というのも納得。


2017年2月21日火曜日

映画「イージー・ライダー」

” Easy Rider "

最近のトランプ大統領のニュースを見るたびに昔の映画「イージー・ライダー」のことを思い出す。我々には奇妙に見える大統領の言動と、それが多くのアメリカ人から支持されていることの理由がこの映画から見えてくる。

アメリカ西海岸の2人の若者がバイクで旅するロードムービーだが、南部に来たとき地元の住民に射殺されてしまう。殺したのは善良な市民で、自分たちの古き良き生活と異なる価値観を持ち込む「よそ者」に対する強い憎しみを持っている。彼らにとっての「よそ者」とはロサンジェルスやニューヨークの都会の文化であり、自由で開放的な若者文化だ。映画で今でも強く印象に残っているのがこのような地元住民の憎しみの表情だった。

トランプは都市部では負けたが、中西部や南部の田舎で圧倒的に支持されて勝ったが、その背景がこの映画でよくわかる。トランプは彼らのために「よそ者」を排除しようと懸命に頑張っている。彼らにとっての現代の「よそ者」とは、知識人や高学歴者、東部のエスタブリッシュメント、金融で儲ける金持ち、移民や異教徒、それらを支持するメディア、など。みんな「イージー・ライダー」での「よそ者」につながっている。

2017年2月16日木曜日

ルドンのパステル画

Redon of the Mitsubishi Ichigokan Museum, Tokyo

三菱一号館美術館によく行く(現在は「オルセーのナビ派展」開催中)が、どんな企画展の最中でもこのルドンのパステル画は常に展示されている。この美術館の目玉コレクションなのだろう。

ルドンはもともとは幻想的で不気味な絵が有名で、「げげの鬼太郎」の水木しげるも参考にしたという一つ目小僧の作品が代表例だ。それがどういう心境の変化か50歳を過ぎてから一転してパステルでこのような美しい花の絵を描くようになった。この変化はパステルを始めたからこうなったのか、それともこういう絵を描きたくなったからパステルを始めたのだろうか? パステル画には「甘い」絵というイメージが今でもつきまとっているが、ルドンにとってもそうだったのだろうか? 


2017年2月12日日曜日

大人の塗り絵 ウィリアム・モリス


An Arts & Crafts Coloring book  "William Morris"

大人の塗り絵が流行っているのは知っていたが、それを孫が熱中しているのを見てびっくりした。昔の塗り絵のイメージと違って緻密かつ複雑でけっこう面白そうだ。そうしたらたまたまウィリアム・モリスの壁紙を塗り絵化した本を見つけたので買ってみた。見開きの左がオリジナルで、右が塗り絵用になっている。(ロンドンのV&A美術館のコレクションどうりらしい)やってみると、オリジナルの色を再現するのがけっこう難しいが、日本とは違うイギリス的なモリスの色彩感覚を体感できる。


2017年2月8日水曜日

ナビ派展

Exhibition  "Orsay Nabis"

ナビ派をこんなにまとまって見れる展覧会は初めてかもしれない。遠近法と陰影法を無視して、ベタ塗りの色面で構成した平面的な絵は完全に浮世絵的な世界。絵のフォーマットも、日本美術的な掛け軸風あり、屏風絵風ありで面白い。

作品を提供しているのは印象派の殿堂のオルセー美術館だが、その館長があいさつの中で、これからは印象派よりナビ派を重視していくと宣言している。確かに今まで、あまりにも絵画=印象派みたいな風潮が強すぎた感がある。

2017年2月3日金曜日

今週観た映画

期待作がいっせいに始まり、映画館通いの一週間。


「未来を花束にして」△ 
女性参政権運動の歴史について勉強になったが、映画としては普通。メリル・ストリープが運動の指導者役で登場し、女性差別反対の演説をしているのが、彼女のトランプ大統領批判と重なって面白かった。


「マグニフィセント・セブン」×
「七人の侍」へのオマージュ的な宣伝につられて観たが凡作。

「エゴン・シーレ  死と乙女」◯
モデルの日常のさりげない動作を「ストップ、そのままで」とビデオの一時停止みたい止めてスケッチする。シーレの人物に動きがある理由がわかる。また「死と乙女」で「乙女」役のモデルと絡み合っている「死」の役は本人で、鏡を見ながら描いている。彼は雇ったモデルは使わず、妹や恋人をモデルにしていた理由が分かる。そして女性を次々に替えていった理由も。

「沈黙  サイレンス」
キリスト教の信仰というテーマにスコセッシ監督が真正面から取り組んでいる。読んでいないが遠藤周作の原作に忠実なようだ。たまたま10日ほど前に隠れキリシタン関連の世界文化遺産への推薦が決まった。

「レオナルド・ダ・ヴィンチ  美と知の迷宮」×
「天才の謎が明らかに」という宣伝文句だったが、ほとんどが常識の範囲内の内容で期待外れ。強いていうと、弟子のサライという人が描いた「裸のモナリザ」という絵が面白かった。「え?」という感じの作だが、興味があればネットで検索を。

「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」
初日の初回上映で観た。またもティム・バートン流のイマジネーションが爆発している。