「BUTTER」
近年イギリスで日本の小説が大ブームで、たくさんの日本人作家の小説が翻訳され出版されている。そして去年 2024 年1年間のイギリスのベストセラー・ランキンングの第1位が柚木麻子の「BUTTER」だったという発表があった。イギリスで、高い評価を得て、数々の文学賞を受賞した。またイギリス以外でも世界で100 万部以上売れた。海外での日本小説ブームは近年ずっと続いていて、小川洋子や多和田葉子はすでにノーベル文学賞候補になっている。例年名前があがる村上春樹より先に受賞するのではないかといわれている。柚木麻子もそれに続くかもしれない。
「BUTTER」を読んだが、今までにない斬新な発想の小説だ。2009 年に実際に起きた、男をつぎつぎに結婚詐欺で騙して財産を奪い、そして3人を殺した連続不審死事件の犯人の女を題材にしている。当時も、この若くもなく美しくもない女がなぜ男たちを簡単に騙せたのか不思議がられていたが、この小説は、雑誌の女性記者が、拘置所にいる女と何度も面会を重ねて、女の人間性を解き明かしていくという設定になっている。会うたびに聞かされるのは、女の「食」への強いこだわりだ。記者は、教わったレシピを自分でも作ってみたりする。特に「バター」を使った料理は絶品で、記者は「食への欲望」に目覚めていく。そして女性記者は徐々に女の魔力的なまでの人間性の魅力に魅せられ、取り憑かれていく・・・
この柚木麻子だけでなく、小川洋子や多和田葉子などの、文化背景の違う日本の小説が世界中で読まれるようになったのは、その世界観に、世界に通用する「普遍性」があるからだ。日本でしか通用しない「私小説」ばかりだった日本の小説が変わってきた。それにしても、ノーベル賞の季節 10 月が近くなったが、日本人作家の文学賞受賞はあるかどうか。
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