2024年7月23日火曜日

映画「メイ・ディセンバー ゆれる真実」

「May - December」 

公開中の「メイ・ディセンバー ゆれる真実」は、なかなかの秀作だった。「メイ・ディセンバー」(May - December)とは「歳の離れた夫婦」という意味の慣用句だそうだ。

全米に衝撃を与えた、実際にあった「メイ・ディセンバー事件」に基づいている。当時 36 歳だった女性グレイシーは、アルバイト先で知り合った 13 歳の少年と関係を持ち、逮捕され、実刑となった。少年との子供を獄中出産し、刑期を終えて二人は結婚。今は平穏な日々を送っている。

この事件の映画化が決定し、グレイシー役に決まった女優のエリザベス(ナタリー・ポートマン)が、役作りのために本人のことをもっと知りたいと思い、グレイシー(ジュリアン・ムーア)を訪れる。

何日にも渡り、生活のすみずみまで一緒にいて密着取材を続ける。すると取材を「する人」と「される人」だった二人の関に微妙な感情の変化が生まれてくる。ある日ふとしたことから、グレイシーはエリザベスの化粧をしてあげる。このシーンは長回しで 2 ~ 3 分間も続く。見ている観客は何かゾクっとするものを感じる。


さらに二人は、お互いを知るほどに、その優しい言葉や表情の奥深くにある、何か異質のものを感じていく。表にまったく出さないで、そのことを観客に感じさせる二人の演技力がすごい。

そして、エリザベスが当時の関係者から聞き取りをしていくうちに、事件の真実について疑念が湧いてくる。現在のグレイシー夫妻の裏に隠された本当の姿についての疑念だが、それを暗示するシーンがいろいろと挿入される。しかしそれらは断片的で、映画は具体的に説明しない。すべてを観る人の想像力にまかせている。


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