「Oppenheimer」
オッペンハイマーは、悪魔の兵器を作った極悪人だとされる。しかしオッペンハイマーという人がいなければ原爆は生まれなかったかというとそんなことはない。彼個人の自由意志で原爆は作られたわけではなく、時代の要求に応えて、一科学者として貢献したにすぎない。映画には、原爆を計画し、作り、使った人たちがたくさん登場する。ナチスドイツより先に原爆を完成し戦争に勝つという愛国心と、科学者としての使命感からマンハッタン計画を指揮し成功する。しかし、広島・長崎で何十万人もの人間を殺したことで、自分の手が血塗られたことを自覚する。そして戦後は、これ以上の核兵器の開発を止めることを政府に訴え続ける。しかしすでに米ソ冷戦時代で、ソ連との水爆開発競争になっていたので、それに反対するオッペンハイマーはソ連のスパイだと見なされ、裁判の被告になってしまう。
映画は、科学者としての使命を果たした達成感と、それがもたらした結果への罪悪感とが葛藤するオッペンハイマーの苦悩を描いている。これは今でも答えがない「科学技術者と倫理」という永遠の課題だ。
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