Akira Kurosawa & Now
先日、TV ( 4 / 8 Eテレ)で「能の美」という番組があって大変興味深かかった。黒澤明はさまざまな作品で、能の美学を取り入れていたが、晩年にその意図を説明するドキュメンタリー「能の美」を作ろうとして撮影を開始したという。それは未編集のままで中断してしまったが、残されたシナリオから黒澤の「能」に対する傾倒ぶりと、映画に「能」が与えた影響の大きさがわかるという。能の影響が強い作品の具体例として番組が取り上げていたのは「蜘蛛巣城」だった。シェークスピアの「マクベス」を翻案して、日本の戦国時代に置き換えた作品だ。
武将に謀反をそそのかす妻(山田五十鈴)の顔を能面そっくりに近ずけることにこだわって、メイクに何時間もかけたという。
能は、リアリズムと正反対の究極の「様式美」(Stylization)の演劇だが、能舞台の、松を描いた「鏡板」と呼ばれる背景にもそれが表れている。映画のこの場面では、背景に、絵巻や屏風絵によく使われた雲が描かれている。写実性とは異なる日本独特の様式美だ。役者の所作振舞も、摺り足の歩き方など、リアルな「演技」ではない能の様式をそのまま取り入れている。
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