Heider and Simmel Animation
「ハイダーとジンメルの動画」という有名な実験がある。単純な図形が動き回るだけの1分ほどのアニメーション動画を被験者に見せ、どう感じたかを問う。まずこの動画を見てほしい。(8 0 年前なので画質は悪い)
→ https://www.youtube.com/watch?v=VTNmLt7QX8E
動画にはナレーションも字幕もなく、被験者に対して事前の説明もない。しかしほとんどの被験者は、三つの図形が人間だと解釈した。そして、小さい三角が男の子で、丸がその恋人で、大きい三角がそこに割って入って、力ずくで丸を自分のものにしようとしたが、小さい三角が撃退すると、大きい三角は怒って、家を壊してしまう・・・といった「物語」を大部分の被験者が感じとった。
人間は、様々な断片的な情報をネットなどから日々受け取っているが、それらをまとまった全体像として把握するのは難しい。だから人間は「物語」を作ることで、物事を理解しようとする。複雑な物事もいったん「物語」ができてしまえば、それに沿って細部についてもなぜそうなのかを説明できる。
だから「物語」は政治家などに悪用もされる。「物語」は見えていることの裏にある「真実」を語る(ように見える)。真実でないことも「物語」として語れば真実に思えてくる。「物語」を作り上げて、「実はこういうことなんだよ」と語る。受け取る側も「そういうことだったのか!」と納得してしまう。
政治の世界で「Narrative」(ナラティブ)という言葉が最近よく使われるが、それが「物語」のこと。政治指導者が、「物語」を語ることで、自身の正当性を主張し、国民を動かそうとする。例えば、「隣の国は我々と同じ民族で、歴史的に長く我が国と一体だった。しかし最近は敵対勢力と結託して、我が国を脅かそうとしている。だから我々は祖国を守るために戦わねばならない」・・・これってなんのことはない、上の動画の物語とぴったり同じ。