「At Day's Close」
2 4 時間営業しているコンビニや飲食店が普通の現代は、夜も煌々と明るく、夜と昼の区別がない。しかしまだ「夜」があった時代について書いた本「失われた夜の歴史」(ロジャー・イーカチ)はいろいろな角度から「夜」の歴史を論じていて面白い。夜を描いた絵画もたくさん出てくる。(画像は同書より)
夜は、悪魔・怪物・魔女たちが人間を支配する恐怖の時間だった。寝ていた僧侶が怪物の襲撃を受けている。グリューネバルトの祭壇画「聖アントニウス」( 1 5 1 2 年)
略奪・暴力・殺人などが横行して、夜の外出は生命の危険を覚悟しなければならなかった。フィリップ・ド・ラウザーバーグの「夜間の強盗の襲撃」( 1 7 7 0 年)
酔っ払い・売春婦・喧嘩する男など、夜の都会は猥雑な無法地帯だった。また2階の窓から道路へ排泄物を捨てているように、ロンドンは不衛生な悪臭の街でもあった。ウィリアム・ホガースの「1日の4つの時間」(1 7 3 8 年)
私的な生活では、就寝時に「これから休みます。安眠をお与えください」とい祈るのが一般的だった。火事や泥棒から守ってくれることや、悪夢を見ないことを祈った。マサイアス・ストムの「祈る老女」( 1 7 世紀)
1 9 世紀になると、夜の犯罪がますますひどくなり、対策として道路にガス灯が設置されていく。これに対して売春婦は「こんな明るいと仕事ができなくなっちゃう」と文句を言ったという。すると通行人が「まったくだ、お姉さん、愛にも金儲けにも都合のいい闇がなくなっちまう」と答えたという。すでに今日と同じ、夜のない世界が始まっている。トマス・ローランドソンの「ペルメル街でガス灯を見る」( 1 8 0 9 年)
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