2020年9月25日金曜日

絵から輪郭線をなくす 恒常視の利用

 Constant vision

人間の知覚はうまくできていて、眼で見た物の情報が一部欠けていたり不十分であっても、脳でそれを補って完結した形として認識することができる。このように途切れた形を見ても、脳がつないでくれるので、3角形を見ることができる。頭とシッポしか見えていない、木の陰に隠れているライオンをライオンと認識できなければ命に関わるから、この知覚能力が発達してきた。このように不完全な状態でも、常に同じ形として見ることができるのは「恒常視」と呼ばれる。

この球の絵は、輪郭線が無い。代わりに明暗差で輪郭を感じさせている。しかもそれが途切れ途切れでも球に見えるのは「恒常視」のおかげ。現実の物には輪郭線など無いから、見える通り自然に描くには、有効な方法だ。まず輪郭線を描いて、その中に色を塗るといった塗り絵的なことをしなくてすむ。

ジョン・ハーディというイギリスの水彩画家はこういう描き方がとてもうまい。明暗差だけで形を描いていて、輪郭線で区切らないから、物とまわりの環境が溶け合って、自然に見える。


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