Ingres & Gogh
2つの絵を比べてみる⑦ 絵画への写真の影響、アングルとゴッホの人物画
アングルの肖像画は、上流階級の女性を格調高く描いている。注文主であるモデルを立派に見せている。
この時代に写真が発明されて、写真家という商売が始まる。写実絵画のチャンピオンだったアングルは、写真が画家の仕事を奪うとして、写真業を禁止するように政府に求めることまでしたという。しかし裏ではこっそりと、写真家にモデルの写真を撮らせ、それをもとに、このような肖像画を描いていたそうだ。
アングルの他にも写真を使って描いた画家は多かったらしく、ある研究によれば、マネ・コロー・ミレー・ドラクロワ・クールベ・ドガ、など、そうそうたる人たちが写真利用派だったという。
写実絵画には写真が重宝がられたが、写実よりも、画家の感じたものを描くことに重点を置く人たちは、写真利用を否定した。それは、ルドン・ゴーギャン・ムンク・ゴッホ・マティス、などだったという。
写真は、透視像の正確さで勝っているが、当時の写真は白黒で、しかも白黒コントラストが強く、中間調を再現できなかった。だから画家たちは、写真にはできない、絵画の強みを活かそうと考えて、光と色の絵に進んでいった。それが印象派を始めとした近代絵画誕生のきっかけの一つになった。
(以上、黒田正巳「空間を描く遠近法」による)
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