2019年2月27日水曜日

リートフェルトの「赤と青の椅子」と マッキントッシュの「ヒルハウス」

Historic chair,   Rietveld & Macintosh

この間行った埼玉県立近代美術館に、歴史的名作椅子のコレクションがある。有名なものばかり50 点くらいが揃っていて、自由に座ることができる。
(写真:同館ホームページより)

リートフェルトの「赤と青の椅子」があったので初めて実際に座ってみたが、予想通り座りごこちは悪い。「デ・スティル」の仲間だったモンドリアンの抽象絵画をそのまま3次元の椅子に置き換えたようなものだ。リートフェルトの建築「シュレーダー邸」は世界遺産に登録されているが、この椅子も 20 世紀初頭のモダンアートの始まりを告げる歴史的な作品だ。

マッキントッシュの「ヒルハウス」にも座ってみたが、これも実用性はほとんどない、というより、これは鑑賞用の椅子と言っていいだろう。美しい直線の格子は、これも 100 年前としては先駆的な形だ。同じマッキントッシュの「ウィロウチェア」は無かったが、これもカーブした背もたれの格子の構成が美しい。

2019年2月25日月曜日

ユニークな個展


知人 A さんの個展。石・風化した貝殻・ビンのかけら・錆びた針金、など道路や浜辺で拾ったモノのコレクションをそのまま並べている。特別の価値があるわけでもないそんなモノをなぜ拾ったのかを自問し、そこから自論を展開している。


2019年2月23日土曜日

「インポシブル・アーキテクチャー」展

Exhibition "Impossible Architecture"

はるばる浦和(埼玉県立近代美術館)まで行ったかいがある面白い企画展だった。画期的な設計なのに、紙の上だけで終わってしまったアンビルト建築をスケッチや模型で見ることができる。例えば有名な「第3インターナショナル記念塔」が CG 動画で再現されていたが、こんなに巨大なものだったということを初めて知った。

丹下健三の東京都庁舎は中世の大聖堂を模した高層ビルで、権威主義的建築と批判されることが多い。しかし磯崎新はその都庁舎コンペに参加しながら、高層ビルという設計条件を無視して、低層の横長ビルを提案した。そこには縦割り行政を解体し、都民に開かれた都政を、という想いがあったが、本人の予定どうり落選した。このように多くのアンビルト建築は、実際に建てることよりも、作者の批判精神を表明したり、建築の理想を提案するためのものだった。

その批判をパロディにした「都庁舎はこうだった方が良かったのでは?」という会田誠の作品が面白かった。そんなに東京の権力の象徴が欲しいなら、いっそのこと江戸城を上にひき伸ばした形の高層ビルにすればいいじゃんと皮肉っている。

そんな中、ザハ・ハディドの例の新国立競技場は、コンペに勝った「ポシブル建築」だったのに、寄ってたかって引きずり降ろされてしまったかわいそうな例としてあげられていた。惜しいことになった傑作だった。

2019年2月21日木曜日

「ル・コルビュジェ         絵画から建築へ -- ピュリズムの時代」展

"Le Corbusier and the Age of Purism"

今まで何度かあったコルビュジェ展と違う画期的な内容で、コルビュジェが建築家になる前の画家の時代に焦点を当てている。若い頃、ジャンヌレという名前(本名)で「純粋主義」(ピュリズム)の運動を推進していた時代の作品を多数見ることができる貴重な展覧会。(国立西洋美術館)

その特徴は、物の形を透視図的でなく投影図的に分解して、バラバラにした上面図と側面図を組み合わせて再構成するという、すでに建築的な物の見方をしている。形を幾何学的に純粋な形として捉える「純粋主義」が、後のコルビュジェが推進していく、幾何形態による機能主義建築の原点になっていることがはっきり分かる。

(図は、国立西洋美術館の展覧会サイトより)

2019年2月19日火曜日

セザンヌの名言「自然は、球と円錐と円柱でできている」

Cezanne’s famous saying

静物を描いていて、セザンヌの有名な言葉を思い出した。『自然は、球と円錐と円柱でできている。自然を幾何形態に分解し、形態をしっかり捉えることによって、単なる表情ではなく、存在感を描くことができる。』 自分の絵を使って形の分解をやってみたが、そういう意識で物を見ると確かにそうなっていて納得する。


・ぶどう→   「球」そのものの集まりだから簡単。
・洋梨→ くびれの部分の陰影から、大小2つの「球」が重なっていることがわかる。
・貝→ 複雑な形で一見わかりにくいが、分解してみると、輪切りにした3つの「球」が
    連なっている。しっぽの部分は「円錐」。
・ガラス器→ 「球」を半分に切った形で、わかりやすい。台の部分は「円錐」の頭を切っ
       た形。

2019年2月17日日曜日

「クマのプーさん展」と映画「グッバイ・クリストファー・ロビン」

Exhibition "Winnie-the-Pooh"  &  Movie "Goodbye Christopher Robins"

「クマのプーさん」は作家の A・A・ミルンと、画家の E・H・シェパードとの共作による本だが、展覧会ではシェパードの原画が大量に展示されている。ミルンの子供とぬいぐるみをモデルにして、デッサンを繰り返しながら挿絵のイメージを練り上げていった。その鉛筆デッサンが素晴らしく、一見の価値がある。(ただし会場は超満員。)
(渋谷  BUNKAMURA  ザ・ミュージアム、~ 4 / 14 )



「クマのプーさん展」を観に行く前の "予習" のつもりで「グッバイ・クリストファー・ロビン」を DVD で見たが、映画としてじゅうぶんに面白くてびっくり。「プーさん」の作者 A・A・ミルンと、その息子の半生を描いた伝記映画だが、ホンワカした本とはかけ離れた悲劇的な話だ。

ミルンは息子をモデルに「クマのプーさん」を書いたが、主人公の名前を、本名と同じ「クリストファー・ロビン」にしてしまった。本が爆発的なベストセラーになり、息子は有名人になってしまい、本の宣伝にも利用され、「クリストファー・ロビン」が一人歩きしてしまう。やがて成人した息子は本の「クリストファー・ロビン」に決別し(だから「グッバイ」)本当の自分になるために、志願兵になり、戦争に出征していく・・・

2019年2月15日金曜日

「工事中!」展

Exhibition 「The "Under Construction"」

日本科学未来館で開催中の「工事中!」展が面白い。ふだんあまり見かけない最新型の重機を見ることができる。デジタルの時代に「いかにも機械!」の形が残っている貴重な分野だと思う。






2019年2月13日水曜日

静物「梨とぶどう」

"Pear & Grapes"

途中で放ってあった絵を完成させた。モチーフごとの質感の違いを描くのだが、ぶどうがいちばん難しい。ぶどうは果肉が透明なので、光が透過して、影の側が明るくなる。それを実際より強調してビー玉のようなつもりで描いた。

Soft pastel + Hard pastel,  Canson Mi-Teintes paper,  30cm × 35cm

2019年2月11日月曜日

シャルダンの静物画の「光」

Chardin

シャルダンの静物画はいつもこのように、ほの暗い部屋にかすかな光が差し込んでいて、その中にモチーフが浮かび上がっている。しかし右側にあるグラスはわずかなハイライトが見えるだけで暗い背景の中に溶け込んでいる。主役を際立たせ、脇役を控えめにさせる強弱のつけ方がうまい。それがこの空間の光を感じさせるとともに、構図が単調になるのを防いでいる。

高校の美術の教科書にこの絵が載っていた記憶があるが、たしかに静物画のお手本のような絵だ。四角い箱は烟草ケースで、それによリ掛かっているのはキセルだが、細くシャープな斜めの直線がとても効果的だ。シャルダンの背景は、この絵のように光源と反対側の右奥を明るくしている場合が多いが、光が ”差し込んでいる” 感を強調する意図にちがいない。

2019年2月8日金曜日

シャルダンに学ぶ果物の描き方

Chardin

絵の「質感」とは、物の性質を手で触ることなく、目で感じさせることだが、それには物に当った光が反射・吸収・透過する様子を描くことでしか表現できない。モチーフを目の前にしていても、その光の違いが見えていないことも多いが、質感の教科書のようなシャルダンの静物画を見ると分かってくる。いろいろな果物がどう描き分けられているか見てみた。



ぶどう
果肉が透明なので光が透過し、凸レンズのような効果で、光源と反対側の影の中にハイライトが生じる。ビー玉と同じ性質。




表面にうぶ毛があるので、色のコントラストが柔かくなる。光が当たってもハイライトができない。あの独特の手触りを目で感じることができる。



ざくろ
ざくろの外皮は硬くてツルツルしているので、明暗コントラストが強くなる。ハイライトも強い。陶磁器のような性質に近い



「梨地」という金属の表面加工は、細かいザラつきのあるテクスチャーで、柔らかい光の反射を生む。語源の梨はまさにそれ。


メロン
ねっとりした果肉なので、光は吸収され反射しない。だから変化をつけずに、ほぼオレンジ色だけで塗りつぶしている。

2019年2月6日水曜日

シャルダンの静物画

Chardin

巨匠シャルダンの絵は古典的だが、静物画の教科書のようで、眺めるといろいろとヒントが見つかる。


緻密に計算された構図も参考になる。これは定番のピラミッド型構図だが、安定しすぎないようにポットをセンターからずらしてシンメトリーを避けている。またぶどうやナイフをテーブルからはみ出させることで単調な直線が画面を横切らないようにしている。さらに光をうまく使って明暗の変化を作っていて、例えば右端のグラスはほとんど影の中に溶け込んでいる。「安定と変化」という構図の基本のお手本のような絵だ。

2019年2月4日月曜日

パステル画の歴史

A History of Pastel

有名なパステル画家というと、ドガとルドンくらいしか思い浮かばないが、実はよく知っている巨匠たちもパステル画を描いていた、という歴代パステル画作品集のムービー。

  こちら→   https://www.youtube.com/watch?v=7AlKrS5ARFI&feature=share

その中からの例だが、それぞれ油彩画とはぜんぜん違うスタイルなのが面白い。

ゴッホ
スーラ
シャガール
ムンク
ピカソ

2019年2月2日土曜日

ロンドンの大道絵描き、上海の大道書家

Pavement artist

今月公開の「メリー・ポピンズ・リターンズ」を見たが、オリジナルの「メリー・ポピンズ」にあったこのシーンは無かった。道路にチョークで絵を描く大道絵描き(Pavement artist)。映画なので上手さはわからなかったが、帽子を置いていたので賽銭をもらって生活しているのだろう。

上海に行った時、道路に字を書いているおじさんを何度か見かけた。長い筆を使って水で書いている。乾燥した道路なので、水でもはっきり読める。すぐに蒸発して消えてしまうが、すらすらと書き続けている。趣味でやっているらしく、賽銭をもらっているふうではなかった。意味はわからないが字は上手い。さすが漢字の国だと思った。

日本ではこういうのは見ない。昔は大道絵描きがいたが、道路に描くということはなかった。記憶ではたしか墨かなにかで色紙に描いて売っていたと思う。