今「ピエール・ボナール展」(国立新美術館)をやっているが、一番面白かったのは食卓の絵だった。ボナールは食卓の絵をたくさん描いているが、みなテーブルを四角に描いていて、遠近法的な見え方を無視している。
普通に描けば、テーブルは向こう側ですぼまり、食器などは前後の重なりと奥行きが生じる。しかし遠近法的に物を見ることができない子供は概念で描くから、テーブルは四角く描き、食器は個々バラバラに描く。ボナールは子供と同じ見方で描いている。これをボナール自身は「生の見方」と呼んでいたそうだ。テーブルや食器を遠近法的に一つの空間として関係づけずにバラバラに描いているのは、たしかに「生」といえるかもしれない。
( 子供と画学生の食卓の絵の比較 。 "Objective Drawing Techniques" より)