2017年4月27日木曜日

パステルで工場を描く


現代パステル協会展に出品中。工事中の工場をモチーフに。(東京都美術館 〜5 / 2)

"Fortress",   Hard pastel on board primed with pumice,   80cm × 100cm

2017年4月25日火曜日

「バベルの塔」展(続き)

Exhibition " The Tower of Babel " #2

前回書いたように、この絵は 75cm ほどの小さい絵なのだが、ここになんと1400人くらいの建設作業員が描かれているという。肉眼ではほとんど見えないのだが、同時展示されている300% の拡大複製でよく見える。

ブリューゲルはなぜ空想の高層建築を、建設中として描いたのか。こんな天にも届くような塔を建てると、人間の傲慢さに神様が怒って天罰を受けるぞ、という世界観を視覚化したと言われている。

こういう観念は西洋ではかなり普遍的なものだから、これ以降も何度となくバベルの塔が描かれてきた。展覧会でもそれらが展示されている。これは18世紀のバベル。

今の時代でも人間は科学技術によって自然をコントロールしようと様々な ”高い塔” を作り続けている。その結果たくさんの災害という天罰を受けている。だからこの絵のテーマは、400年後の今につながっているはずだと思うが、実際はどうだろう。

別の展覧会で見た「バベル」というタイトルの、ある日本人画家による絵だが、そういう世界観のようなものは感じない。CGで描いた建築レンダリングのように見えてしまう。

2017年4月20日木曜日

「バベルの塔」展

Exhibition " The Tower of Babel "


「バベルの塔」展が始まったのでさっそく観に行った。実在しない空想の高層建築を描いているが、なおも建設中でさらに高さを増そうとしている。ブリューゲルはなぜこんな絵を描いたのか、専門家の解説によれば・・

天にも届くような塔を建てようとする人間の傲慢さが神の怒りに触れて天罰が下ったという聖書の伝説を、当時の時代に当てはめて描いたもので、建築を文明の象徴として描くことで世界没落のビジョンを表現している・・・(今で言えば、原子力やら自然破壊やらの ”高い塔" を作って滅びへ向う、ということか)

この絵は想像よりずっと小さかった。東京芸大が所蔵美術館と協力して作った 300 %に拡大した精巧な複製も展示しているが、原画では見えない建設作業をする人々や重機が驚くほど細かく描かれているのが分かって面白い。

2017年4月15日土曜日

パステルで静物を

A still life with pastel

静物を描いた。花瓶はスペイン製で、籐を巻きつけたもの。ちよっと気に入っている。

"Autumn Light"   hard pastel on board primed with pumice,   68 cm × 48 cm

2017年4月12日水曜日

アプローチ R

Approach R

何度見ても気になる。電車の窓は直線と円弧のつなぎ目が錯覚で凹んで見える。飛行機の場合は、直線と円弧の間にもう一つのゆるいカーブを挟んで視覚的歪みを補正している。このアプローチ R の効果は大きい。


スマートフォンのような場合も、歪んだ形(左)が多い中で、さすがに i Phone(右)はきちんとやっている。


感覚だけの問題で性能や機能に関係ないことだが、それだけに、メーカーのものづくりの姿勢が見えて面白い。

2017年4月9日日曜日

池田学「The Pen」展

IKEDA  Manabu  " The Pen "

池田学の「The Pen」展が佐賀県立美術館で終ったが、巡回して東京に来るのは9月だそうなので、ひと足先に図録を買ってながめている。

表紙の絵は、東日本大震災の津波をモチーフにして、自然の破壊力と生命の再生力を描いた「誕生」という作品の部分拡大。長さ4mの大作だが、ペンとインクだけで描くので、一日に10cm 四方しか描き進められないそうだ。アメリカの美術館で公開制作をしながら3年間かかっている。

そんな細かさなのに、描かれている世界観のスケールの大きさがすごい。ある人は「顕微鏡的な精密さと、望遠鏡的に宇宙を見る俯瞰性が共存している。」と表現している。


2017年4月6日木曜日

AI が描いたレンブラントの「贋作」

The forgery drawn by AI

最近、「The Next Rembrandt」というプロジェクトが話題になった。AI を使ってレンブラントの作風をコンピュータに学習させ、レンブラントの「新作」を描かせるというもの。贋作作家が巨匠の作風を徹底的に研究して、それ風の贋作を描いているのと同じことをコンピュータにやらせているわけだ。

今は実在の画家の絵しか描けないのでまだ「贋作」の域を出ないが、やがては完全オリジナルでしかも人間には描けないようなすごい絵を描くようになるかもしれない。囲碁や将棋の AI と対局したプロ棋士たちは、以前は読みの正確さで負けたと言っていたが、最近は独創性で負けたと言うようになった。同じことが絵画でも起こるかもしれない。 

AI が描いたレンブラントの「新作」とその部分拡大。3D プリンターでマチエールまで作っている。詳しくはこちらを  →  https://www.nextrembrandt.com/


2017年4月4日火曜日

映画「美術館を手玉にとった男」

"Art and Craft”

「美術館を手玉にとった男」は 30 年もの間 100 点以上の絵で美術館をだまし続けた実在の贋作画家のドキュメンタリー映画。この人は贋作を美術館にただで寄付していたという不思議な人。だから発覚後も罪に問われなかった。金儲けが目的ではなく、自分の絵が美術館に展示されていることにひそかな喜びを感じていた。映画では絵の制作過程や、だましのテクニックなどを実際の証言から再現していてとても面白い。


この人は巨匠の作風を真似たオリジナルの絵を描き、新発見の作品と言って騙す。欧米では個人所蔵されていた知られざる作品がよく売りに出されるので、そのウソが信じられやすい土壌がある。逆にコピーしただけの贋作はすぐにバレる。だから贋作作家は模写がうまいだけではダメで、巨匠の絵を研究するのに大変な努力をしている。

2017年4月1日土曜日

懐かしの映画ポスターと野口久光

The retro movie posters by H. Noguchi

昭和の匂いがよみがえってくる昔懐かしい映画ポスター。当時のポスターの多くは野口久光という人が描いていて、この人が映画ポスターのスタイルを作りあげた。高校の大先輩だが、東京芸大を出て映画会社の宣伝部に入り、昭和 40年くらいまで描き続けた。

こんな情感たっぷりの手描きのポスターはすっかり姿を消してしまった。フランス映画全盛の時代から、 CG 多用のハリウッド映画時代に代わったという映画自体の変化と無縁でないと思う。ちなみにこの名画6作のうち「第三の男」以外はフランス映画だ。

       (写真:「野口久光  シネマ・グラフィックス」より)