アンドリュー • ワイエスは一枚の絵を完成させるまでの過程で、たくさんのスケッチやデッサンを繰り返し、繰り返し描いている。最初は実際の物や風景を見たままスケッチすることからスタートするのだが、次々にそれは変化していく。イマジネーションをどんどんふくらませて、最初のスケッチとは全く違う絵になっていく。その過程を最終作品と見比べると、彼にとって、絵とは「描く」ものではなく、「作る」ものと考えていたのではないか、と思う。だが、写実力にごまかされて、対象をありのままに描いていると錯覚してしまう。彼は「メランコリーの画家」といわれるが、物を即物的に写実しているだけではメランコリーのような感覚は生まれない。心のなかにあるイマジネーションを形にしようとして試行錯誤をいくなかで、それは徐々に生まれてくるのだろう。
この絵は、牛乳しぼりの作業小屋を描いた作品。井戸水の水槽があり、壁にバケツが掛かっている。窓の外には牛の姿が見える。すべての物が写実的に緻密に描かれている。ワイエスがどうのように「絵を作っていく」のか、この絵が出来るまでのプロセスを順に見てみる。
(図版引用:「ワイエス画集 - カーナー牧場」より)
奥さんが作業している情景のクイックスケッチから 始まる。
壁に掛かったバケツだけに着目したスタディスケッチ。
全体画面構成を検討。人物はなくなり、正面に窓が現れる。
構成が固まってきた段階。窓の外に牛の姿が加えられた。
水槽の詳細スケッチ。蛇口から水が出ていたり、水槽から水があふれているなどを加え「活き活き感」をだしている。
着色スケッチによる質感表現などのスタディ。窓の形はまだ最終と違う。
最終作品。
はじめまして
返信削除制作過程が載ってるのは
わかりやすいです 制作過程を初めてみました
この絵は一点透視法かと思えば
消失点があちこちにあります
こんなに写実なのに 凡人が描いたら
おかしな絵になっちゃいますね