2025年11月4日火曜日

静物画の「重なりの遠近法」

 Overlapping Perspective

18 世紀フランスのシャルダンは、静物画の大巨匠として有名だ。台所などにある普通のものをモチーフにして、それらが語りかける穏やかな日常生活を表現した。それが見る人の情緒を呼び覚まし、共感を生んだ。それを可能にしているのが、個々のモチーフの形を描くだけではなく、それらが置かれている「空間」を描いているからだ。モチーフがしっかりとテーブルに乗っていることや、背後の壁との間の空間を感じさせることなど。


このように「空間」を描く静物画では、物と物との空間関係を正しく捉えなければならない。だから風景画と違って、「線遠近法」より「重なりの遠近法」が大事になる。

これに関して、初心者向け遠近法の教科書「Perspective Made Easy」に面白い事例があったので以下に紹介する。

静物画でこのようにモチーフが重なりあっているケースがよくある。だがこの絵はおかしい。

モチーフの裏側を描くと、斜線部分で物どうしがお互いに食い込んでいることがわかる。

物と物の間隔を修正して正しい位置に置き換えるとこうなる。
 

デッサンするとき、物の表面だけをなぞるのではなく、遠近法的に物を見なさいという教えだ。

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