Perspective in Japan
日本絵画では「線遠近法」はあまり発達しなかったが、代わりに「重なりの遠近法」と「大小の遠近法」が日本独特の遠近法として発達した。
伊藤若冲の「群鶏図」は「重なりの遠近法」の代表作とされる。たくさんの鶏が手前から向こうへ重なって描かれ、「重なり」によって奥行きを表現している。しかし鶏の大きさに「線遠近法」的な大小変化はない。
広重にも「重なりの遠近法」の絵がある。「名所江戸百景」の中の「日本橋通一丁目略図」という絵が面白い。建物が線遠近法なので、それに合わせて、遠くの人間も小さくなっているのだが、傘をさしている人々が重なっている。重ねることで遠近感を強調している。
その広重の「名所江戸百景」には「大小の遠近法」がたくさん使われている。「水道橋駿河台」で、3匹の鯉のぼりが描かれているが、手前の鯉のぼりは、画面全体を覆うほど大きい。向こうの鯉のぼりは小さい点ほどで、極端な大小の差が遠近感を強く感じさせる。
手前の松が画面全体を占めていて、枝の間から遠景が見えている。枝の形の面白さで画面構成をしている。このように「大小の遠近法」は、絵の大胆な構図を生み、印象派に大きな影響を与えたことはよく知られている。
同じく「江戸百景」の「高輪うしまち」も同様で牛車が極端に大きい。後ろに牛が描かれているが、線遠近法的にいえば、小さくすぎる。風景画というより画面の構成の面白さをねらっている絵だ。なおこれらは「近像型構図」と呼ばれることもある。
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