2024年6月5日水曜日

印象派の水彩画

 Watercolor Paintings by Impressionist

「水彩画の歴史」(橋 秀文  著)は中世から現代に至るまでの水彩画の歴史を概説している。たいていの美術史が油彩画を中心に書かれているなかで、この本は勉強になる。例えば印象派の水彩画について・・・

印象派の画家たちはほとんど水彩画を描かなかったという。写生スケッチをするときも鉛筆やパステルを用いることが多かったそうだ。そのなかで、ルノワールだけは水彩スケッチを描いた。「森の小径」はハッチングのように細い線を集合させていて、水彩画特有の「にじみ」や「ぼかし」を使っていない。印象派が油絵でやっていた「筆触分割」の水彩版だろうか。樹々の光の当たった部分がオレンジで、陰の部分が紫色、といった色使いが、「ウォームライト、クールシャドウ」の典型で、いかにも印象派的だ。輝くような色感と光のきらめきがルノワールらしい。


ベルト・モリゾも水彩画の佳作を残しているが、基本的に油絵の習作だったらしい。「庭園に座る小型のパラソルをもった女」は、素早く簡潔な筆使いが、光あふれる瞬間の輝きを捉えていて、水彩画らしい清潔感にあふれている、


セザンヌは印象派の中で、もっとも水彩画を愛した画家だという。小品の静物画「緑色の壺」では、控えめな色数で、光を受けた壺の作り出す明暗を微妙な筆致で表現している。


セザンヌは、水彩画の特性である透明感を生かすことを追求した。「緑のメロンのある静物」は、全てのモチーフで透明感のあるクリスタルのような輝きがある。軽やかさと清澄さのある魅力的な絵だ。



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