2024年6月22日土曜日

ホキ美術館と「写実絵画」

 Realism painting

千葉市の「ホキ美術館」へは3回くらい行った。「写実主義」をうたい文句にしている。来館者のほとんどが「すごいね、まるで写真みたいだ。」と感心している。確かに「写真みたいな」テクニックに「感心」する。しかし絵としての「感動」はあまりない。

「写実」の「実」の入った字をあげてみると、「真実」「実態」「実質」「現実」など、「目に見えない隠れた本質」といったニュアンスの言葉だ。だから「写実」も、表面に見えているものを写すだけでなく、その奥にある「実」を「写」すことのはずだ。例えばレンブラントの肖像画はとても写実的だが、見えているとおりを超えて、その人の人間性までせまっている。

同館の作品で、野田弘志という画家による天皇・皇后両陛下の肖像画がある。二人に直接会ったことはなく、宮内庁の依頼で写真をもとに描いたそうだ。報道などで見る写真のとおりの姿で、お二人の人間性などは伝わってこない。

その野田弘志氏が書いた「リアリズム絵画入門」という本で、「写実絵画」とは何かについて語っている。例として「卵」を描く場合をあげている。「リアルに描くということは、見えている殻の形や明暗をそのとうりに描くだけではダメで、殻の内側にある中身を意識して、その『ズシリと重い実体』を感じさせなければならない。」としている。そして、卵の写真(左)と自作の絵(右)を比較している。絵の方は3つ並べて、絵の構成としての面白さがある。しかし卵そのものは、とくに「ズシリと重い実体」の感じはない。


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