2024年2月8日木曜日

イタリア系移民の哀しみ 映画「ゴッド・ファーザー」

「THE GODFATHER」

前回、日本人とアイルランド人のアメリカ移民の苦しみを描いた映画(「愛と哀しみの旅路」と「ブルックリン」)について書いたので、今回はイタリア系移民をテーマにした「ゴッド・ファーザー」について。哀愁を帯びた音楽とあいまってイタリア系移民の哀しみを描いた超名作だ。

子供の頃にイタリアからやってきた貧しい移民が、最後はマフィアのドンにまでに登りつめる生涯を描いている。そして 「ゴッド・ファーザー  PART 2」では、その息子が父の跡目を継いでマフィアの強力な支配者になっていくまでを描いている。

「ゴッド・ファーザー」の背景になっているイタリア系アメリカ人について、「シネマで読むアメリカの歴史と宗教」(栗林輝夫)で以下のように解説している。

『寄る辺のない移民たちに懸命に手を差し伸べたのはカトリック教会だった。教会は行事や祭りを開催し、住民の結束力を強めた。「ゴッド・ファーザー」で、聖人祝祭日に人々がマリア像を乗せた山車を担いでニューヨークの街を練り歩く姿が描かれている。そして駆け出しだった主人公はその当日、花火の打ち上げ音に紛れて敵対するマフィアのボスを射殺する。』

『一方で、そのようなカトリックのイタリア人が街を練り歩いたりする姿は、プロテスタントがほとんどのアメリカ人にとっては胡散臭く、「誤った」信仰に感じた。そして大量のイタリア系移民によって、アメリカがカトリック国家になってしまうのではないかと怯えた。また犯罪の増加はカトリック系移民のせいだとか、イタリア人移民がアメリカ人の仕事を奪うとか、偏見と差別が根強かった。この映画でも、住民が家主からイタリア人だからとアパートから追い出されるシーンが出てくる。』


そういう差別の中で、イタリア人のコミュニティは結束が強くなる。その中心がゴッドファーザーで、困っているイタリア人を助けて信頼を得てゆき、やがて裏社会での強大な権力を握ってゆく。イタリア人コミュニティーを守り、またファミリーを守るために陰謀や裏切りに対しては非情に敵を殺す。

「PART 2」の主人公はイタリア系移民2世だが、高等教育を受けた知的なエリートで、軍隊でも功績をあげた立派な ”アメリカ人” だ。しかしマフィアのボスの子に生まれたばかりにファミリーをを守るために自分もゴッド・ファーザーとして裏社会で生きていかなければならない。その哀しみが映画の主題になっている。

映画のシーン:(上)軍隊から戻り、盛大な結婚式を挙げる。各界名士が参列して祝福される。(下)エリートになるはずだった夫がやがて闇世界に入り、人間が変わってしまう。部下と殺しの相談をしている夫を見ている妻の表情。


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