Antiwar painting of Russia
「反戦と西洋絵画」は、出たばかりの本で、著者(岡田温司)は、ロシアのウクライナ侵攻がきっかけで、戦争への想いを絵画はどのように表現してきたのかを振り返るために、この本を書いたという。反戦絵画が生まれたのは 17 世紀からで、それまであったのは、英雄的な武勲や勝利の栄光を讃える、勝者の側から描かれた「戦争画」だった。同書は、勝者/敗者という立場を超えて、戦争の悲劇を訴える近現代の反戦絵画の歴史をたどっている。ゴヤやピカソなどの有名な絵だけでなく、初めて見る作品も多く、参考になる。
19 世紀末のロシアの画家で、ヴァーシリー・ヴェレシチャーギンという人の絵が紹介されている。ロシア・トルコ戦争に従軍した経験をもとに描いた絵は、戦争の悲惨さと犠牲者への弔いの意が込められている。
「戦争の神格化」 無数の殺された兵士の頭蓋骨が山積みになっている。同書によれば去年、ロシアのウクライナ侵攻に抗議するため、この絵の複製を掲げたロシア人が逮捕されたという。この絵が今日でもロシア国内で密かに反戦のシンボルとみなされていることの現れだという。
「敗北」 地平線のかなたにまで無限に広がる荒野に無数の兵士の遺体が並べられていて、司祭が鎮魂の祈りを捧げている。
「戦争捕虜の道」 寒々しい雪原のなか、敗走のトルコ兵があちこちで行き倒れになっている。敵方の兵士の悲惨な運命にも目を向けている。
では現在のロシアの状況はどうなのか、ネットで調べてみた。それによれば、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシアのアーティストや美術館が次々に反戦の意を表明しているという。そして多くの画家が反戦絵画を制作しているが、文化統制の厳しいロシア国内では発表できず、多くは日本の美術館で展示されているという。その一例、エカテリーナ・ムロムツェワという画家の作品。
0 件のコメント:
コメントを投稿